トンデモない一行知識の世界 OLD - 唐沢俊一の「雑学」とは -

一部で有名な唐沢俊一の一行知識に、ツッコミを入れたり派生トリビアを書いたり。
「愚かで分別のない人と思われたいなら、唐沢俊一のトリビアを引用しなさい。」

 
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2009/1/17  20:08

チャップリン姉妹といっしょにしていたとすればヒドイ話だけど  『トンデモ一行知識の逆襲』間違い探し編

『トンデモ一行知識の逆襲』 P.121 ~ P.122
 私が小学生の頃、深谷リカちゃんという頭のいい女の子が隣の席に
いた。二年から三年になったときクラス替えがあって、新しい教室に入り、
席について隣を見たら、同じ顔をした女の子が座っている。あれ、また
同じクラスになったんだ、と思っていたら、その子はリカちゃんの双子の
妹のサクラコちゃんという子で、しばらく混乱した。どちらも頭がよかった
が、リカちゃんは国語や社会が得意、サクラコちゃんは算数や理科が
得意。顔も声もおんなじなのに、やっぱりどこか違うんだなあ、と不思議
な気がしたものだ。
 私が混乱したのは、このふたりが同じ服装をしていたということにもよる。
双子の親というのは、まず必ずと言っていいほどふたりの子に同じ服装、
同じオシャレなどをさせて、他人の目をコンランさせようとする。まあ、不
公平をなくそうとするからだろうが、それ故に双生児は自己主張や個性
を発揮するのがそうでない子供より多少遅れる、という統計がある。
マーカス兄弟と一緒にするわけではないが、深谷姉妹も、やはり他の
友達より、姉妹一緒にいるときの方が楽しそうだった。

遺伝子の支配する領域を広くとりすぎです、唐沢俊一先生」のコメント欄に入力した
箇所について。

双生児は自己主張や個性を発揮するのがそうでない子供より多少遅れる」といわれて
も……小学校三年生ですでに「リカちゃんは国語や社会が得意、サクラコちゃんは算数
や理科が得意
」というのだったら、充分に早いうちにそれぞれの個性を発揮していると
思うのだが……。

で、Wikipedia によると、30 ヵ月の時点での男の双子では言語発達の遅れは目立つ
という話はあるが、女の双子ではそれほどでもない。4 歳になると、男女ともにあまり
差はなくなるとのこと。唐沢俊一が例にあげているような小学生の双子の女の子たち
には適用できなそうもない話だし、何よりリカちゃんとサクラコちゃんについては、発達
の遅れどころか、唐沢俊一本人が「どちらも頭がよかった」と書いているくらいだし。

http://ja.wikipedia.org/wiki/一卵性双生児
>また、DNA情報は個々人の獲得形質に直接的な影響を与えることはないため、身体
>能力なども(似ているが)個々人で異なり、学校の得意科目やスポーツの得意・不得
>意が分かれることも多い。
〈略〉
>幼児期の双子は、言語の発達が単生児と比べて遅いと言われる。特に男・男の双子
>の場合、顕著な遅れが見られることがある(女・女の双子の場合、言語発達の遅れは
>明確なものではなく、確認される場合でも、大きな遅れではない)[63]。30ヶ月の男の
>双子幼児の場合、言語発達の遅れの程度は単生児や女の双子と比べ、表出言語で
>8ヶ月の遅れ、言語理解で6ヶ月の遅れ、ごっこ遊びで5ヶ月の遅れが見られた[64]。
>一般に双子間でのみ通じる「秘密の言語」(あるいは、双子言語)の存在が発達の
>遅れの要因として疑われることが多いが、そのような双子間専用のコミュニケーション
>手段が仮に存在したとしても、言語発達の程度に対する影響は非常に微々たるもので
>ある[65]。なお、34組の4歳の双子を調査した結果によれば、4歳時点で女の双子の
>方が若干ながら言語能力と運動能力で高い能力が見られたが、男女間の差より出生
>時体重の差による影響の方が大きく、その出生時体重による差も大きなものではな
>かった。また、一卵性と二卵性の違いによる言語・運動能力の差も認められなかった
>[66]。


双子の言語発達に興味のある人は、上記の [63] の PMID 3434133、[64] の. PMID
3434132
、[65] の PMID 16690234、[66] の PMID 1950347 を参照してみるのもよい
かも (ちなみに [65] 以外はどれも『トンデモ一行知識の逆襲』の初版 2000 年より前)。

上の Wikipedia の引用にある「双子間でのみ通じる『秘密の言語』」は、PMID 3434132
によると、多くの男の双子にはみられるけど、女の双子にはそうでもないとのこと。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/3434132?dopt=Abstract
> "Secret" language characterised most of the twin boys but not the girls and the
> relation of this to articulation delays is discussed.


実は先に『超常現象の謎に挑む』――唐沢俊一が『トンデモ一行知識の逆襲』に書いたと
いうか劣化コピーしてガセビアにした、ジャクリーン姉妹ジャックとオスカージム双子
の元ネタ本――を読んでいた者としては、「秘密の言語」と女の子の双子の例が頭の中で
結びついていたので、少々意外に思った。この本に載っていたグレースとバージニアの
話や、チャップリン姉妹の話の印象が強かったせいで。

『超常現象の謎に挑む』 P.406 ~ P.408 (チャップリン姉妹の話)
> 2人の食べ方は一致していた。ゆっくりフォークとスプーンを一緒に持ち上げ、料理
>は一品片付け終わってから次のに取り掛かる。しかしもっとも不思議なのは、彼女らが
>同じ言葉を同じときに使うことだった。特に興奮したり、ストレスがあると、そうなった。
>だが気をつけて聞いていると、一方の発語はわずかに他より遅れていた。
〈略〉
> 2人の成育を綿密に調べてみると、彼女らの異常なまでの一体感は両親、特に母親
>によって積極的に助長されたものであり、彼女はふたりに同じものを着せ、友達を持つ
>ことを許さなかった。2人は知能面で異常は無く、ヨーク自宅近くの中学校に通っていた。
〈略〉
> たぶん、チャップリン姉妹の話し方は、双生児の意思疎通の仕方の特殊性を示す
>ものだろう。よく知られているのはイデオグロシアで、双生児に多く見られるが、2人の
>個人がお互いの間に、高度に創造的な語彙と構文を持つ完全な詩的言語を作り出し
>ている現象である。
> しかし、これはよく下位の範疇に属するトゥイン・スピーチと混同される。このほうは
>変形された言葉や慣用句の私的なコレクションで、自分たちが孤立しているとか、
>秘密主義、または その両方という理由で、全双生児の40%がつかっていると推定
>されている。ほとんどの 双生児は3歳の時点でそれを捨てるが、双生児のロバート・
>A・ネルソンは1932年、「ニューヨーク・タイムズ」に書いた中で「兄(弟)と私が話すと
>き、そしてそれは6歳過ぎまで続いたが、2人は自分たちだけの奇妙なことば使いで 
>話し合っていた」彼らの独特な話を理解できたのは8歳以上の兄だけだった。


『超常現象の謎に挑む』 P.408 (グレースとバージニアの話)
> 一卵性双生児のグレースとバージニアは、1970年にアメリカのジョージア州コロン
>バスで、トム・ケネディとドイツ生まれのクリスティンとの間に生まれた。〈略〉17ヶ月で
>2人は明らかにイデオグロシアにかかり、自分たちだけの言葉を早口で話し始めた。
>2人が英語にあわせたものは“マミー”と“ダディー”という言葉だけだった。2人はお互
>いをポト、カベンガ と呼び合った。
> 彼女らが2歳のとき、一家はカリフォルニアに引っ越したが、グレースやバージニア
>の遊び友達は近所にいなかった。2人は自分たちだけでいるか、母方の祖母ポーラ・
>クーレルトに預けられるかだった。 彼女は厳しいしつけをモットーとして、いまだに母国
>語のドイツ語しか話さなかった。
> 1977年、カリフォルニア州サンディエゴの小児病院言語療法士がこの双生児の研究
>を始め、現在2人が使っている言語の謎の手がかりを得ようと、2人の会話をテープに
>録音しだした。〈略〉テープを分析した結果、彼女らの会話はイデオグロシアでまで
>至っていない何かであることが明らかになった。明らかに新しい言語と思われるものの
>多くは、ドイツ語や英語がごっちゃになった単語や句を誤って発音したものであり、そ
>れが猛スピードで話されているのだということが判明した。2人は成長すると急に英語
>を話すようになった。


その他参考 URL (というか『超常現象の謎に挑む』からの手入力?):
- http://academy6.2ch.net/test/read.cgi/psycho/1160100092/448-
- http://gimpo.2ch.net/test/read.cgi/esp/1199580812/253n-

唐沢俊一が、これらのエピソードに影響されて、双子の女の子といえば「自己主張や
個性を発揮
」するのが「多少遅れる」ものだという話につなげたのだろうと想像するのも、
そう強引な話ではないだろう。「同じ服装、同じオシャレなどをさせて」を、なぜか「それ
故に双生児は自己主張や個性を発揮するのがそうでない子供より多少遅れる
」として
しまっている謎も、チャップリン姉妹が念頭にあったと仮定すれば、なるほどと思えない
こともない。

もちろん、前述したように、成績もよく得意科目も別々の双子の話をしながら、そんなこと
をいってもあまり説得力がないし、唐沢俊一自身、「他の友達より、姉妹一緒にいるとき
の方が楽しそうだった
」と苦しい (?) 話の締めくくり方をするしかなかったわけだし。他の
友達とあまり口をきかないわけでもなし、双子の姉妹の仲がよくて何が悪いのか。

そうでなくとも、「自己主張」はともかく「個性を発揮」の遅れとやらを、どう統計をとった
ものと唐沢俊一が想定しているかも疑問。自己主張が控えめなのも個性のうちではない
か、個性はどう測るのか、平均との差が小さいと「個性を発揮」の「遅れ」とみなすのか。
まあ、一卵性双生児同士と、二卵性双生児や双生児以外の兄弟との差を比べることは
可能かなと思うけど、差が小さければ「個性を発揮」の遅れとみなしてよいのかという
疑問は依然残る。

ついでに、唐沢俊一の語る深谷姉妹の話というもの自体が、唐沢俊一が何に混乱して
いたというのか焦点がはっきりしなくて、嘘っぽい感じなんだけど。仲良しの双子なら、
リカちゃんが唐沢俊一の隣の席にいたという小学校二年生のとき、サクラコちゃんがリカ
ちゃんのところに話をしにきたりとか、服装からしてそっくりなふたりを同時に目撃する
機会は多かったんではないかと思うので。小学校二年生のときは混乱しなかったのかと
読んでいるこちらが多少混乱してくる。



2009/1/19  1:39

投稿者:トンデモない一行知識
http://tondemonai2.web.fc2.com/

ああ、やはりそうですか<小学生ともなれば違う服

私自身は、小学生のときは双子の同級生がいなくて、中学では制服、
高校以上は服が違って当たり前と、身近な例がなくて自信がなく、
何となくスルーしていたのですが。

まあ、唐沢俊一の方も似たようなもので小学生の頃の知り合いは深谷
姉妹くらいだったとすれば、本文にも書いた「チャップリン姉妹」、
『超常現象の謎に挑む』に載っていたその他の写真 (双子に同じ服を
着せて撮った写真が多数) などに影響されて、「必ずと言っていいほど
ふたりの子に同じ服装」などと書いてしまったのではないかと想像し
ます。

本や雑誌をつくる側が、双子やその他のそっくりさんを集めた特集の
ときに、同じ服、同じ髪型での写真を撮りたがるというのはあるよう
に思います。昔 anan かどこかでやっていた特集のときもそうでし
た。

そういうのと日常着る服、着せる服とは違うのでしょうが、身近に
いないと、つい勘違いするのかもしれません。

2009/1/18  16:32


>双子の親というのは、まず必ずと言っていいほどふたりの子に同じ服装、同じオシャレなどをさせて、他人の目をコンランさせようとする。

少なくとも私は、そんなことしませんけど。っていうか、一卵性双生児でも色の好みは違うので、小学生ともなれば違う服になってくるもんですけど。

   
 
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