トンデモない一行知識の世界 OLD - 唐沢俊一の「雑学」とは -

一部で有名な唐沢俊一の一行知識に、ツッコミを入れたり派生トリビアを書いたり。
「愚かで分別のない人と思われたいなら、唐沢俊一のトリビアを引用しなさい。」

 
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2008/12/31  15:30

ジェームズというよりジムという顔をしていたのでは  『トンデモ一行知識の逆襲』間違い探し編

『トンデモ一行知識の逆襲』 P.123
一九七九年に報告された例では、生まれたばかりでまだ名前もついて
いない一卵性双生児がそれぞれ別の家庭に引き取られたが、両方とも
偶然に、親に「ジェイムズ」と名付けられた。たぶん、いかにもジェイムズ
という顔をしていたのだろう。ひきとった家庭はそれぞれもうひとりの養子
をもらっていたが、その名前がどちらもラリーだった(このふたりは双子
ではない)。ふたりとも犬を飼って、それにトロイと名前をつけていた。
ふたりとも、リンダという女性と結婚し、離婚したあとベッツィという女性と
再婚した。子供が生まれると、片っ方はアランと名付け、片っ方はアレン
と名付けた(惜しい!)。ふたりとも別荘がフロリダにあり、愛車はシボレー
だった。ふたりとも、ガソリンスタンド、ハンバーガー屋でアルバイトし、
警察に勤めていたことがあった。
 これは単なる偶然なのか、それとも何か一卵性双生児の間には離れて
いても通じる、テレパシーのような精神の交感があるのだろうか。

引き取られた」と「ひきとった」の表記不統一は原文ママ。

× トロイ ○ トイ (Toy)
× 警察に勤めていたことがあった
○ 似た職業についていたことがあった (製鋼所の警備員と執行官代理)

子どもの名前は、片方が James Alan で、もう片方が James Allan。……これ、Alan も
Allan も、辞書で見る発音記号はいっしょなんだけど。
http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?enc=UTF-8&p=Alan&dtype=1&stype=1&dname=1ss
http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?enc=UTF-8&p=Allan&dtype=1&stype=1&dname=1ss

また、「別荘がフロリダに」あるかどうかは不明。家族で休暇をフロリダの海岸で過ごす
と書いてある資料は複数あるが、別荘の有無について言及しているものはないようだ。
不明といえば、「それぞれもうひとりの養子をもらっていたが、その名前がどちらもラリー
だった
」どうかも真偽不明。「ガソリンスタンド、ハンバーガー屋」が「アルバイト」だった
かどうかも怪しい。

以下は、この件について調べた経緯。

唐沢俊一は、この一卵性双生児の話を何をもとに書いたか、いっさい示していない。
いろいろ検索していたら、斉藤啓一という人が書いた以下のページがまず見つかった。

[1] - http://www.interq.or.jp/sun/rev-1/D03-3.htm
> そればかりでなく、人生そのものさえ似通ってくるケースが少なくないのだ。たとえ、
>生後すぐに引き離され、お互いの交流もなく、異なった生活環境で育てられたとしても
>である。
> ジェームズ・スプリンガーとジェームズ・ルイスの双子が、まさにその典型であった。
> 二人は1939年にオハイオ州で生まれたのだが、事情があって、5週間後に、一方
>はスプリンガー夫妻に、もう一方はルイス夫妻に引き取られたのである。両者の家庭
>は距離にして130キロほど離れており、両夫妻とも、双生児の他方は死んだと告げら
>れていた。つまり交流はいっさいなかったのである。
> ところが、ふとしたことで互いの存在を知った二人のジェームズは、39歳のときに
>再会を果たし、信じられないような共通点があることを知ったのだった。
> まず、二人とも学校では数学が好きで書き取りが嫌いだった。二人とも爪を咬む癖
>があり、酒を飲み、煙草を吸っていた。もちろん、この程度の共通点では何の不思議も
>ない。問題はこれからなのだ。
> 実は二人とも、養子の兄弟と育てられたのだが、その名前が同じラリーであった。ま
>た、子供の頃に飼っていた犬に、二人ともトロイという名前をつけていたのである。
> さらに驚くのは、二人とも結婚して離婚し、そして再婚したのだが、前妻の名前がリ
>ンダ、後妻の名前がベッツィという点でぴったり一致していたのである。しかも、最初の
>子供につけた名前が、一方がジェームズ・アラン、一方がジェームズ・アレンという、
>たった1字の違いだけだった。
> 他にも、休暇はフロリダの同じ小さな海岸で過ごし、シボレーを乗っていたこと、同じ
>ハンバーガー・チェーン店、ガソリンスタンド、非常勤の副保安官を経験したこと、18歳
>のときに緊張性偏頭痛に悩んだことなどがわかった。
〈略〉
> こうしたケースを説明するには、やはり双子の間にテレパシー的な意識交流があっ
>たとしか考えられないだろう。さもなければ、まるで打ち合わせでもしていたかのよう
>に、同時勃発的な運命を経験することは不可能であろう。


上記に引用したのは、「宇宙意識の覚醒」という文章の一部で、2001 年のアップらしい。

http://www.interq.or.jp/sun/rev-1/D-library.htm
>未発表の著作、および過去に出版して現在は入手困難な著作が収納されています。
>03 宇宙意識の覚醒  01/01/04  ニューサイエンスを駆使した超常現象の解明


唐沢俊一の文章とかなり似ているが、唐沢俊一の『トンデモ一行知識の逆襲』の方が
2000 年初版なので唐沢俊一の方が先。しかし、唐沢俊一が書いていない情報も多い
ので、逆にこちらが唐沢俊一の本を見て引き写したとも考えられない。(しかし、理由は
後述するが、唐沢俊一がこれをパクったか、共通のパクリ元があったとしか思えないほど
の類似)。

とにもかくにも、唐沢俊一の文章にはなかった「スプリンガー」と「ルイス」のおかげで、
この双子の話を探すのがずっと楽になって助かったのは事実。

Jim Lewis と Jim Springer (Jim twins) の話は、Nancy Segal の『Entwined Lives
(2000 年 4 月) でも紹介されている [2]。生き別れになっていた双子が再会したのは、
彼らが 39 歳のときで、1979 年 5 月の PEOPLE 誌が当時のことを伝えている [3]。
この PEOPLE 誌の記事にも登場する心理学者の Dr. Bouchard が、双子を調査 [4]。
日本でも、「ジム・スプリンガーさんとジム・ルイスさん」の話は、『報道できなかった
偶然の一致』 (秋山真人監修) や 1998 年の『アンビリバボー』 (フジテレビ) で紹介
されたとのこと [5]。

[2] ~ [5] の資料では、双子の名前は、ジム・ルイス (Jim Lewis)、ジム・スプリンガー
(Jim Springer) と表記されている。唐沢俊一のいう「『ジェイムズ』と名付けられた」は、
ジムの息子の名前、James Alan、James Allan [2] [3] [4] との混同かとも疑ったが、
[3] の PEOPLE 誌には「both had been christened James」とあるので、「親に『ジェイ
ムズ』と名付けられた
」は間違いでもなさそう。ただ、「いかにもジェイムズという顔をして
いた
」というわけではなかったので (?)、ジムと呼ばれることが多いのだろう。

で、最初に述べた通り、ふたりのジムが飼っていた犬の名前は、「トロイ」ではなく、トイ
(Toy) である [2][3][4][5]。「トロイ」としているのは、唐沢俊一の他は [1] の斉藤啓一と
いう人のみ。

辞書では同じ発音記号であるジムの息子の名前、Alan と Allan を、「アラン」と「アレン
の 1 文字違いと表現しているのも、『トンデモ一行知識の逆襲』の唐沢俊一と [1] のみ。
[5] や、その元ネタの『報道できなかった偶然の一致』では、どちらも「アラン」なのだ。

唐沢俊一以外で、「ひきとった家庭はそれぞれもうひとりの養子をもらっていたが、その
名前がどちらもラリー
」というのに言及しているのも [1] のみ。[1] では「もうひとりの」と
限定していないという違いがあるが。

ついでに、ジムの再婚相手の Betty (Betsy ではない) を、唐沢俊一は [5] のように
ベティ」と表記しないで、[1] と同様「ベッツィ」としている。

先にふれたように、唐沢俊一が [1] か [1] の元ネタのみを読み、劣化コピーしたのでは
ないかという状況なのだ。それも、[1] の記述の中でも、他の資料と一致している部分は
スルーし、食い違っている箇所だけをわざわざ選んだかのような感じで。

唐沢俊一による勝手な書き換えと思われる部分も別に存在していて、[1] を含む他の資
料にはない「別荘がフロリダにあり」、ガソリンスタンド、ハンバーガー屋で「アルバイト」。
そして、「警察に勤めていたことがあった」。[3] では「Lewis is a security guard at a
steel mill, and Springer was a deputy sheriff
」、[1][2][5] では part-time posts as
sheriffs、(非常勤の) 保安官補になっている。

保安官についての参考 URL:
- http://oshiete1.goo.ne.jp/qa143685.html
- http://ja.wikipedia.org/wiki/保安官

で、まあ、[1] を書いた人は、『ムー』によく書いていたライターで、学研からその手の本を
何冊か出している。その人が、一卵性双生児の人生の奇妙な一致について、

> こうしたケースを説明するには、やはり双子の間にテレパシー的な意識交流があっ
>たとしか考えられないだろう。さもなければ、まるで打ち合わせでもしていたかのよう
>に、同時勃発的な運命を経験することは不可能であろう。


と書くのはよいと思う。しかし、と学会であった唐沢俊一が、これとそっくりの、

>これは単なる偶然なのか、それとも何か一卵性双生児の間には離れていても通じる、
>テレパシーのような精神の交感があるのだろうか。


を結論めいたものとするのは、どうかと思う。しかも前段の部分で、劣化させた情報を
並べたうえで……ならば、と学会って何だったんだろうなと。


[2] - http://science.howstuffworks.com/genetic-science/twin1.htm
> Consider the extreme case of the "Jim twins." Identical twins Jim Lewis and Jim
> Springer were only four weeks old when they were separated; each infant was
> taken in by a different adoptive family. At age five, Lewis learned that he had a
> twin, but he said that the notion never truly "soaked in" until he was 38 years
> old. Springer learned of his twin sibling at age eight, but both he and his adoptive
> parents believed the sibling had died. The two were finally reunited at age 39.
> The similarities the twins shared not only amazed one another, but researchers
> at the University of Minnesota as well. The very fact that you had twin siblings
> separated at birth bearing the same name, both 6 feet tall and weighing exactly
> 180 pounds is pretty incredible. But there's more.
> In her book Entwined Lives, Nancy Segal lists the following shared
> characteristics:
> As youngsters, each Jim had a dog named "Toy."
> Each Jim had been married two times -- the first wives were both called "Linda"
> and the second wives were both called "Betty."
> One Jim had named his son "James Allan" and the other Jim had named his son
> "James Alan."
> Each twin had driven his light-blue Chevrolet to Pas Grille beach in Florida for
> family vacations.
> Both Jims smoked Salem cigarettes and drank Miller Lite beer.
> Both Jims had at one time held part-time posts as sheriffs.
> Both were fingernail biters and suffered from migraine headaches.
> Each Jim enjoyed leaving love notes to his wife throughout the house.


[3] - http://www.people.com/people/archive/article/0,,20073583,00.html
> May 07, 1979 Vol. 11 No. 18
> Two Ohio Strangers Find They're Twins at 39―and a Dream to Psychologists
> By Rosemary Rawson
〈略〉
> Curiously, both had been christened James by their adoptive parents, the Jess
> Lewises of Lima and the Ernest Springers of Piqua, 40 miles away. As schoolboys,
> both enjoyed math and carpentry―but hated spelling. Both pursued similar adult
> occupations: Lewis is a security guard at a steel mill, and Springer was a deputy
> sheriff (though he is now a clerk for a power company). Both married women
> named Linda, only to divorce and remarry―each a woman named Betty. Both have
> sons: James Alan Lewis and James Allan Springer.


[4] - http://en.wikipedia.org/wiki/Thomas_Bouchard
> In 1979, Bouchard came across an account of a pair of twins (Jim Springer and
> Jim Lewis) who had been separated from birth and were reunited at age 39.
> "The twins," Bouchard later wrote, "were found to have married women named
> Linda, divorced, and married the second time to women named Betty. One named
> his son James Allan, the other named his son James Alan, and both named their
> pet dogs Toy."


[5] - http://homepage2.nifty.com/LUCKY-DRAGON/kakurega-10unmei-2.htm
>  さて、そのようにして人の運命が調整された結果、どのようなことが生じるかという
>具体的な事例が、今回紹介する、ジム・スプリンガーさんとジム・ルイスさんという双子
>の兄弟の体験事例です。〈略〉
>  この双子の兄弟は、1998/ 6/13『アンビリバボー』(土曜日、夕、7時~8時、
>フジテレビ )というTV番組に出演しましたから、御覧になった方も多いのではないで
>しょうか。〈略〉
>   『 ふたりは、1939年8月、一卵性双生児として生まれたが、生後間もなく兄は
>オハイオ州に住むルイス夫妻のもとに、弟は同州デイトンに住むスプリンガー夫妻の
>もとに養子に出された。そこでふたりは、偶然にもそれぞれの養父母に「ジム」と名づ
>けられた。
〈略〉
>  ふたりはどちらも、爪をかむくせがあった。不眠症気味というところも共通していた。
>ふたりとも18歳で偏頭痛が始まり、ほぼ同じ頃に治っていた。また、ふたりとも心臓に
>同じ病気があり、体重も同じだった。
>  こういった体質だけのことなら、同じ遺伝子を持つ一卵性双生児ということで、ある
>程度納得できなくもないが、ふたりの共通点はそれだけではなかった。
>  ふたりとも「リンダ」という名前の女性と最初の結婚をし、生まれた息子に「ジエー
>ムズ・アラン」と名づけた。そしてふたりとも最初の妻と離婚し、またもや「ベティ」という
>同じ名前の女性と再婚していた。さらにふたりとも同じ頃に犬を飼い、「トイ」と名づけて
>いた。
>  職歴も同じで、ふたりは最初、保安官補となり、次いでガソリンスタンドに勤め、その
>あとマクドナルドに勤めていた。
>   ふたりとも趣味は日曜大工で、そのために自宅に半地下の仕事場を持ち、いつも
>夏の休暇は同じフロリダの海岸で過ごしていた。そしてふたりとも愛煙家で、同じ銘柄
>のタバコを吸っていた。」 
>   ( 以上、『報道できなかった偶然の一致』 秋山真人監修 竹書房文庫 6章 
>悲劇の運命&奇妙な偶然の数々 これは神様の悪戯か? 双子たちが体験した不思
>議な現実 より ) 


その他、と学会って何だったんだろうシリーズ:
トンデモさんをも超えたトンデモ
水も唐沢俊一も答えなんか知っちゃいない
ノストラダムスも妖術師もビリーバー唐沢俊一にとっては本物?
本当に、と学会の人? < リンカーンの秘書はケネディ
疑わず信じ続けるって、そんなに簡単なことじゃない
オカルトマニアじゃなくても知っているよ<手首に釘説
「人あれば餌あり」って、人を何だと……
結局「チャネリングをテーマにした作品」って何だったんだろう
人たちはすべてが冗談なんだと思っていた
河童には日本酒がよく似合う
黒ミサに夢をもちすぎていませんか唐沢俊一先生

翼君はボールが友達、NHK弓削君は「と学会」バッヂでともだち
と学会バッヂは、ともだち互助委員会の印
いろいろ「と」リンク
長文マダー? の BK 団、十劣衆で、恋のないカラサーガ



2009/1/2  11:26

投稿者:トンデモない一行知識
http://tondemonai2.web.fc2.com/

をを、ありがとうございます。

>175  |【2色刷り特集】双子のミステリー    |●斉藤啓一

実はムーの目次のページには、いっていたのですが、これを見逃して
いたとは……。

あと、これも見落としていたのですが、本文に引用していなかった
斉藤啓一氏の文章には、

>1978年2月には、ピートが交通事故で右目を失うと、8カ月後
>にはダーンも交通事故で右目を失ってしまったというのだ。※30

というのがあって、この「※30」は

http://www.interq.or.jp/sun/rev-1/D03-6.htm
>30 『超常現象の謎に挑む』 コリン・ウィルソン著 教育社 
>1992年

で、「ジム・ルイス」の話もこの本に出ているようです。
http://www.ntv.co.jp/next/nisseieiken/records/044.html
>松沢 そう、このジム・ルイスという人はですね、39歳になって
>兄弟に会うんですよ、双児のね。
>小倉 ツインズの映画みたいじゃないですか。
>松沢 そうそうそう。で、会ってみたところ、奥さんの名前が一
>緒、再婚した奥さんの名前も一緒、子供の名前も一緒、犬の名前も
>一緒、で、職業3回変わってるんですが、3つとも一緒。

こちらは入手予定なんですが、「ジェイムズ」ではなく「ジム」と
なっているようなんで、直接のネタ元は、ご紹介の

>>175  |【2色刷り特集】双子のミステリー    |●斉藤啓一

の可能性が高そうですね。

2009/1/2  10:04


ムー1997年8月号(201号)の目次(リンク先)の下の方に興味深い記事があります。

>175  |【2色刷り特集】双子のミステリー    |●斉藤啓一

斉藤氏は過去に発表した文章もウェブ上で公開されているとのことですから、元ネタが過去の雑誌記事である可能性は十分あると思われます。
私自身はムー201号を未確認でして、真相はわからなくてすみません。

   
 
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