トンデモない一行知識の世界 OLD - 唐沢俊一の「雑学」とは -

一部で有名な唐沢俊一の一行知識に、ツッコミを入れたり派生トリビアを書いたり。
「愚かで分別のない人と思われたいなら、唐沢俊一のトリビアを引用しなさい。」

 
旧 URL は、http://diary.aol.com/yzuc9ww/681.html
文字列の一括置換をかけた都合上、旧ブログのコメント欄および2ちゃんねるのスレからの引用の中の URL も全部新 URL に置き換わっていますことを、あらかじめご了承ください
http://tondemonai2.blog114.fc2.com/ で続きの Blog をやっています
   
 

2008/9/28  4:36

つまり妻は妹ではなく自分自身だったというオチ  『トンデモ一行知識の逆襲』間違い探し編

『トンデモ一行知識の逆襲』 P.98
 彼を同性愛者だった、とする記録もある。現にフランスのルイ十五世とは
肉体関係もあったらしく、恋人のような往復書簡も残っている。けれども、
彼は貴族としてちゃんと妻も持っているのである。もっとも、他人にはその妻
を妹だと言って紹介しているというのだから、わけがわからない。

色仕掛けのオスカル」と「世紀末はロンドンだったシュバリエ」に続く、シュヴァリエ・デオン
のネタ。

ルイ十五世との同性愛説は当時存在していたようだし、国王の「機密局」という任務の
性質もあって書簡は多数やり取りしていたが、「恋人のような往復書簡」というオイシイ(?)
資料が残っているという話はない。

澁澤龍彦『妖人奇人館』 P.25
>歌劇『フィガロの結婚』のケルビーノのような、この女装した美少年の艶姿に、フランス
>国王ルイ十五世がぞっこん惚れてしまい、彼を寝室に誘いこんだというような噂もある
>が、これはどうやら嘘らしい。国王のまわりには、ポンパドゥール夫人の目が光っていて
>まず浮気なんか出来っこない状態だったからである。


そして、「貴族としてちゃんと妻も持っている」という話はない。一応妻がいたならば、
彼を女性と信じ込んだ人の数もずいぶん少なかっただろうし、彼は男性か女性かという
賭けが成立したかも疑わしい。妻がいても、偽装結婚だ本当は女だと言い張ることは
できないことではないとはいえ。

以下、「色仕掛けのオスカル」に引用した箇所と重複する部分があるが……

窪田般弥『女装の剣士シュヴァリエ・デオンの生涯』 P.171 ~ P.172
> 医者でもあるエリゼ神父はデオンの死亡確認をした。その際にはじめて、
>「マドモアゼル・デオン」が紛れもない男性であることを発見し、びっくり仰天した。
>十五年間、デオンを莫逆の「女友達」としてきたメアリ・コール夫人も同様だった。
> エリゼ神父立ち会いのもとに、外科医コープランド、キング、バートンのほか、
>デオンを知る何人もの人間が改めて検証した。誰もが「事実」を覆すことはでき
>なかった。彼らの確認書は、一八一〇年五月二十五日の『タイムズ』紙上に公表
>された
>〈略〉
> 死は有無を言わせずに、シュヴァリエ・デオンの性を公衆の面前にさらけ出した
>のである。
> この思わぬ事実に、すべてのロンドン市民は驚き、呆れたにちがいない。物見高い
>彼らの賭博遊戯も、やっと一段落した。


唐沢俊一は、おそらく実在していないその妻を「妹だと言って紹介」うんぬんと書いている
が、これは下記のエピソードとの混同とも推測できる。

澁澤龍彦『妖人奇人館』 P.26 ~ P.27
> 彼が二度目にロシアに渡った時には、べつに女装したりせず、普通の男のすがた
>だった。今度はダグラスも公使という資格であり、デオンも公使秘書という正式の資格
>で、この前の旅行の際にダグラスが同伴した姪のボーモン嬢は、自分の妹ということ
>にしておいた。しかしモスコウのひとびとは、この兄がボーモン嬢とあまりに瓜二つな
>ので、びっくり仰天したそうである。それも当然であったろう。なにしろ同一人物なの
>だから。



   
 
HOME

 

 

inserted by FC2 system