トンデモない一行知識の世界 OLD - 唐沢俊一の「雑学」とは -

一部で有名な唐沢俊一の一行知識に、ツッコミを入れたり派生トリビアを書いたり。
「愚かで分別のない人と思われたいなら、唐沢俊一のトリビアを引用しなさい。」

 
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2008/9/28  13:58

「しず」と「チン」と「シーン」がごっちゃになっているのでは  その他の雑学本 間違い探し編

『薬局通』 P.224
 こういうふうに内容からつけられる名前のほかに、みなさまよくご存じの
スッキリ、ハッキリといった感覚的ネーミングがある。これはどちらかというと
薬品名というより商品名といった方が近い。
 このうちスッキリは便秘薬、ハッキリは頭痛薬である。なぜか知らないが、
このふたつのクスリにはこのテのネーミングが多い。頭痛の方だと古くから
あるのがケロリン。それからノーシンというのは脳を鎮める、から脳鎮、で
ある。エ、知りませんでした?

何か今更だけど、「ノーシン」問題について、後追いと補足。

唐沢俊一検証blogの「頭が痛くなるガセビア。」にも書いてあるが、ノーシンの公式サイト
には、唐沢俊一のいう「脳を鎮める、から脳鎮」という説はない。

http://www.norshin.jp/various/details/01.html
>ノーシンの命名については諸説ありますが、「脳が新しくなったようにスカッと頭痛が
>治る薬」という意味の「脳新」が最も有力です。
>これ以外にも、脳神経薬である「脳神経の薬」を略した「脳神」説、中国の医薬の神様
>「神農」をひっくりかえした「農神」説などがあります。


で、手元にある、朝日新聞社から出ている社名や商品の由来について書いた本によると、

『社名・商品名検定 キミの名は』 P.80
> 命名の由来は、のむと「脳がシーンとするから」との俗説があるが、同社は「聞いた
>ことがない」と否定する。由来は「諸説ある」といい、「脳神経の薬」だからとか、中国
>の伝説で医薬を作ったとされる「神農」を逆さにしたもの、との説が同社に伝わって
>いる。現在、香港や台湾では「脳新」の名で販売されている。


同ページの欄外には、以下の記述もある。

>脳が新しくなったようにスカッとするので「脳新」、という説はある。

つまり、ノーシンを製造販売しているアラクス社の人も知らなかったという俗説を含めて、
以下の 4 つ。

1. 「脳が新しくなったようにスカッと頭痛が治る」から「脳新」 (最も有力)
2. 「脳神経の薬」を略した「脳神」 (アラクス社に伝わる説)
3. 中国の伝説の皇帝、医薬の神様「神農」を逆にして「農神」 (アラクス社に伝わる説)
4. 脳がシーンとするから脳シーン (アラクス社の人が聞いたことがないと否定した俗説)

唐沢俊一のいう「脳を鎮める、から脳鎮」は、上記の 4 のレベルにすら達していない、
俗説未満ともいえる代物なのだ。「エ、知りませんでした?」といわれても、「知っていた」
と答える方が、嘘つきか何か勘違いしているかという話である。

で、「ベイエリア在住町山智浩アメリカ日記」の「『知っている』それ自体にはもはや何の
価値もない
」によると……

http://d.hatena.ne.jp/TomoMachi/20080922
>>エ、知りませんでした?

> 知るわけないっての!
> だって、「鎮」という漢字の読み仮名は「しん」じゃなくて、「ちん」じゃん!
> (追記:メールで、「鎮」の中国伝来の読み方は「しん」であるという指摘をいただき
>ました。でも、唐沢がそれを意図していたと思いますか? 特にこの場合、唐沢が
>言いたいのは「鎮痛(ちんつう)」の意味だし)


たとえ「『鎮』の中国伝来の読み方は『しん』である」が本当であったとしても、唐沢俊一の
エ、知りませんでした?」のみっともなさ――俗説として広まってすらいない妄説を唱えて
得意がる――に変わりはないのだけど。

でも、漢字の読みは、中国から伝来した時点での読みが定着するのが通常ではないか
と疑問に思って調べてみたら、「しん」という読みは、どこにもなかった。

http://dictionary.www.infoseek.co.jp/?sc=1&se=on&lp=0&gr=kj&sv=KJ&qt=%C4%C3&qty=&qtb=&qtk=0
>【鎮】
〈略〉
>[音訓]チン・しずまる・しずめる
>[名乗り]おさむ・しげ・しず・しずむ・しずめ・たね・つね・なか・まさ・まもる・やす・やすし


http://ja.wiktionary.org/wiki/鎮
>・音読み
> ・呉音 : チン
> ・漢音 : チン
>・訓読み
> ・常用漢字表内
>    しず-める、しず-まる
> ・常用漢字表外
>    おさえ、じん、ちか、しげ

>中国語
>鎮 *ローマ字表記
>普通話
>ピンイン: tia´n (tian2), zh?n (zhen1), zhe`n (zhen4)
>ウェード式: t'ien2, chen1, chen4
>広東語
>イェール式: jan3


http://wagang.econ.hc.keio.ac.jp/zigen/167.xml
>鎮
>  鎭(前條)の俗字。

>鎭
>  ①チン [震]
>  ②チン [眞]
>  ③テン [先]


「テン」はあっても「シン」なんて、『字源』にもねーよ!――って、怒っていいですか?




2008/9/28  22:20

投稿者:トンデモない一行知識
http://tondemonai2.web.fc2.com/

こんにちは (_ _)

>会社のイメージなどにそぐわなかった場合など、後付で考案される
>事もあるようです。

そうですね。それは一応承知しているつもりなのですが、その一方、
話している本人にこれは面白いと信じられているために、根拠薄弱
だったり、あながち間違っていない元ネタを微妙に変形させたりした
ものが、妙に流通してしまうこともあると思うのです。

サンリオの例についても、このブログでは「山梨の王」説をガセビア
として http://tondemonai2.web.fc2.com/347.html にアップして
います。「山梨+オー」説の方はともかく、「王」の方は早めに否定
されていましたし、もっぱら社長以外の人が、どうやらそれが面白い
と信じて吹聴しているのではないかという感じだからです。

「脳シーン」の方は、教えていただいて、ああなるほど、だからわざ
わざあの本の質問項目に入れていたのか、とは思いました。

しかし、最初は本当は「脳がシーン」だったというのは、1918 年に
作られた薬としてアリかなあ? と別の疑問がわいてきます。「脳が
しんとする」で「ノーシン」だったらともかく、「脳がシーン」と
担当者の人が答えたとしたら、その方が面白いでしょという類いの
周囲の期待に応えてしまったものではないかと思ったりします。

まあ、上に書いたようなことは、「しんとする」ではない「しーんと
する」が、大正時代でも一般的だったという場合は、もちろん別の話
となります。実際は、どうだったのでしょうか。

2008/9/28  21:44

投稿者:唐茄子

ノーシンの語源に関しては諸説あるのですが「脳がシーンではない」と否定をし始めたのはこの数年だと思います。
実際、2000年以前に発行された雑学系の出版物では「ノーシンは脳がシーン」説が主流でした。
特に1997年に発行された田中ひろみ著『ナマエの謎探偵団(文化放送ブレーン)P147』では、実際にアラクス本社に問い合わせをして答えを出しています。

>ハイ、ノーシンができてすでに70年になりまして、そのころいた者は
>みんな亡くなっていてはっきりはわかりませんが、"脳がシーン"とす
>るというところから『ノーシン』にしたという話です。
>昔、台湾に輸出するときには、漢字で「脳新」と書いてたそうですよ。
と担当の方が答えています。
現在では「アラクス社の人が聞いたことがないと否定した俗説」となっているのですが、この本ではアラクス本社の方自らがこの答えを語っているのです。

社名の由来は時代によって変化します。会社のイメージなどにそぐわなかった場合など、後付で考案される事もあるようです。(サンリオの由来なども)
個人的意見では、最初は「脳がシーン」などの安易な考えから付けたものが、近年ちょっと格好悪いという事で(しかもトリビアの泉以降、この説が色々な場所で取り上げられる事で)、かつて台湾に輸出した時に考案した漢字表記を由来にしたのでは? と考えています。

でも「脳鎮」は唐沢氏の書籍でしか読んだことの無い説です。

   
 
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