2008/7/11 9:53
阿部定 5 人では総まくりされて壮観というほどでもないような その他の雑学本 間違い探し編
『猟奇の社会史』 P.139 ポスト「阿部定事件」に見る戦後女性の情愛問題
雑誌『読物と講談実話増刊情痴犯罪特集』に載った「この肉体が憎い 男を斬る女たち」
という記事をさす。作者は「雲井咲太郎」で 1958 年発行。
で、その「なかなか壮観」な「総まくり」で紹介されているのは、「1948年高根みつ子」
「1950年森川久美子」「1951年安倍佐太子」「1953年上村千代子」「1953年市橋利恵」
の 5 件である。
1981 年に出版された『19人の阿部定』 (桑原稲敏) では、「1936年大沢君子」「1938年
田中文子 (仮名)」「1948年広瀬きく」「1948年高橋よし子」「1948年青田ウメ」 「1950年
藤田忠代」「1951年安倍佐太子」「1952年矢島良子」「1953年上村利子」「1953年宮古
世里江」 「1954年関口陽子」の 11 件で、「戦後女性」に限っても 9 件。
『19人の阿部定』が知名度や信頼性ではるかに上回っているだけでなく、「総まくりされて
いてなかなか壮観」なのもこちらの方であり、わざわざ昔 (1958 年) の雑誌の怪しげな
記事から引いてくる理由もないはずだが……。
列挙されている人名はほとんど一致しなくて、唯一共通する「安倍佐太子」でも、被害者
の名前が、「美濃輪節夫」「美濃部栄夫」と違っている。
(被害者の名前を含むリストは、まとめ wiki にあった文章を Read More で参照のこと)。
http://www8.ocn.ne.jp/%7Emoonston/country.htm
>もと日活女優の宮古世里江が、愛人の局部を切断し、マンホールに投げ捨てたのち、
>部屋に戻って呻き苦しむ愛人を介抱している最中、あまりの騒ぎに駆けつけた家主に
>発見され、逮捕された。
なお、別件で唐沢俊一の書いた阿部定関連のガセビアには、「昭和十一年の阿倍定
事件のとき。各新聞社がアソコを下腹部という新語で統一」というものもある。
http://www13.atwiki.jp/tondemo/pages/70.html
ガセをコピペで一丁上がり『猟奇の社会史』P139
「ポスト『阿部定事件』に見る戦後女性の情愛問題」 と大上段に振りかぶって見せた
が、唐沢が提示する資料は『読物と講談実話増刊情痴犯罪特集』というはなはだ怪しげ
な雑誌に載った「この肉体が憎い 男を斬る女たち」という記事で、作者は「雲井咲太郎」
という不明の人物。唐沢はこの記事を
と持ち上げているが、ここで紹介されるのは「阿部定事件」の1936年からこの雑誌が
出版された1958年の22年間に発生したポスト『阿部定事件』は
「1948年高根みつ子」宮内新一郎(被害者:以下同じ)
「1950年森川いく子」吉春
「1951年安倍佐太子」美濃輪節夫
「1953年上村千代子」上村信雄
「1953年市橋利恵=宮古世里江」佐藤文雄
の 5件 のみ。
一方、現在ポスト『阿部定的事件』の最も信頼がおける資料 『19人の阿部定』 (桑原稲
敏 現代書林 1981年)には、
「1936年大沢君子」*戦前 大沢進
「1938年某」*戦前 夫
「1948年広瀬きく」平田正之
「1948年高橋よし子」宮原新三
「1948年青田ウメ」足立龍介
「1950年藤田忠代」平尾誠次
「1951年安倍佐太子」美濃部栄夫
「1952年矢島良子」矢島功
「1953年上村利子 」高野文雄
「1953年宮古世里江」某
「1954年関口陽子」藤村淳士
の 11件 が挙げられている(戦後と限っても9件)。共通するのは 「安倍佐太子」「宮古
世里江」 のみ(「上村千代子」は「上村利子」と同じ事件か)だが、被害者の名前が「安倍
佐太子事件」では「美濃輪節夫」「美濃部栄夫」と違っている(桑原の著作では「仮名」は
明記されている。上のリストの「某」は「仮名」の意味)。
両者の資料としての信憑性の差は明らか 。経歴不明の人物が実話雑誌に書いた記事
を検証もせずに引用し論を進める杜撰さ。『猟奇の社会史』の記事の初出は最も古いもの
で2004年。『19人の阿部定』はググれば13,800件もヒットするポピュラーな書なのだから、
引用するならこっちだろうに。 知らないとういのは、もはや犯罪だ。
あの事件以降起こった類似事件が総まくりされていてなかなか壮観だ。
雑誌『読物と講談実話増刊情痴犯罪特集』に載った「この肉体が憎い 男を斬る女たち」
という記事をさす。作者は「雲井咲太郎」で 1958 年発行。
で、その「なかなか壮観」な「総まくり」で紹介されているのは、「1948年高根みつ子」
「1950年森川久美子」「1951年安倍佐太子」「1953年上村千代子」「1953年市橋利恵」
の 5 件である。
1981 年に出版された『19人の阿部定』 (桑原稲敏) では、「1936年大沢君子」「1938年
田中文子 (仮名)」「1948年広瀬きく」「1948年高橋よし子」「1948年青田ウメ」 「1950年
藤田忠代」「1951年安倍佐太子」「1952年矢島良子」「1953年上村利子」「1953年宮古
世里江」 「1954年関口陽子」の 11 件で、「戦後女性」に限っても 9 件。
『19人の阿部定』が知名度や信頼性ではるかに上回っているだけでなく、「総まくりされて
いてなかなか壮観」なのもこちらの方であり、わざわざ昔 (1958 年) の雑誌の怪しげな
記事から引いてくる理由もないはずだが……。
列挙されている人名はほとんど一致しなくて、唯一共通する「安倍佐太子」でも、被害者
の名前が、「美濃輪節夫」「美濃部栄夫」と違っている。
(被害者の名前を含むリストは、まとめ wiki にあった文章を Read More で参照のこと)。
http://www8.ocn.ne.jp/%7Emoonston/country.htm
>もと日活女優の宮古世里江が、愛人の局部を切断し、マンホールに投げ捨てたのち、
>部屋に戻って呻き苦しむ愛人を介抱している最中、あまりの騒ぎに駆けつけた家主に
>発見され、逮捕された。
なお、別件で唐沢俊一の書いた阿部定関連のガセビアには、「昭和十一年の阿倍定
事件のとき。各新聞社がアソコを下腹部という新語で統一」というものもある。
http://www13.atwiki.jp/tondemo/pages/70.html
ガセをコピペで一丁上がり『猟奇の社会史』P139
「ポスト『阿部定事件』に見る戦後女性の情愛問題」 と大上段に振りかぶって見せた
が、唐沢が提示する資料は『読物と講談実話増刊情痴犯罪特集』というはなはだ怪しげ
な雑誌に載った「この肉体が憎い 男を斬る女たち」という記事で、作者は「雲井咲太郎」
という不明の人物。唐沢はこの記事を
あの事件以降起こった類似事件が総まくりされていてなかなか壮観だ。
と持ち上げているが、ここで紹介されるのは「阿部定事件」の1936年からこの雑誌が
出版された1958年の22年間に発生したポスト『阿部定事件』は
「1948年高根みつ子」宮内新一郎(被害者:以下同じ)
「1950年森川いく子」吉春
「1951年安倍佐太子」美濃輪節夫
「1953年上村千代子」上村信雄
「1953年市橋利恵=宮古世里江」佐藤文雄
の 5件 のみ。
一方、現在ポスト『阿部定的事件』の最も信頼がおける資料 『19人の阿部定』 (桑原稲
敏 現代書林 1981年)には、
「1936年大沢君子」*戦前 大沢進
「1938年某」*戦前 夫
「1948年広瀬きく」平田正之
「1948年高橋よし子」宮原新三
「1948年青田ウメ」足立龍介
「1950年藤田忠代」平尾誠次
「1951年安倍佐太子」美濃部栄夫
「1952年矢島良子」矢島功
「1953年上村利子 」高野文雄
「1953年宮古世里江」某
「1954年関口陽子」藤村淳士
の 11件 が挙げられている(戦後と限っても9件)。共通するのは 「安倍佐太子」「宮古
世里江」 のみ(「上村千代子」は「上村利子」と同じ事件か)だが、被害者の名前が「安倍
佐太子事件」では「美濃輪節夫」「美濃部栄夫」と違っている(桑原の著作では「仮名」は
明記されている。上のリストの「某」は「仮名」の意味)。
両者の資料としての信憑性の差は明らか 。経歴不明の人物が実話雑誌に書いた記事
を検証もせずに引用し論を進める杜撰さ。『猟奇の社会史』の記事の初出は最も古いもの
で2004年。『19人の阿部定』はググれば13,800件もヒットするポピュラーな書なのだから、
引用するならこっちだろうに。 知らないとういのは、もはや犯罪だ。
2008/7/12 12:48
投稿者:トンデモない一行知識
http://tondemonai2.web.fc2.com/
http://tondemonai2.web.fc2.com/
2008/7/11 21:42
投稿者:藤岡真
これなど明らかに、書きたいテーマがあって、その資料を探していたら―というパターンではありませんね。たまたま手のとどいたところにカストリ雑誌があって、それをそのままネタにした。それだけの杜撰な仕事なんでしょう。
ままネタに」するならするで、『読物と講談実話増刊情痴犯罪特集』
「この肉体が憎い 男を斬る女たち」という題名や、「雲井咲太郎」
とかいう怪しげな書き手、件数の少なさや信頼できる資料 (『19人の
阿部定』) との内容の不一致あたりを、ネタにして笑うような原稿を
書けばよかったんじゃないのかなと思います。
それにしても、一応、猟奇関係は専門分野のはずなのに。