トンデモない一行知識の世界 OLD - 唐沢俊一の「雑学」とは -

一部で有名な唐沢俊一の一行知識に、ツッコミを入れたり派生トリビアを書いたり。
「愚かで分別のない人と思われたいなら、唐沢俊一のトリビアを引用しなさい。」

 
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2008/1/27  18:17

シラミつぶしに捜しました。本当です。  『トンデモ一行知識の世界』間違い探し編

『トンデモ一行知識の世界』 P.184 (表題)
フランスやイタリアの貴族は健康食としてシラミを食べていた。

この表題に対する本文の説明は、以下の通り:
 表題の一行知識にあるように、十九世紀末、フランスやイタリアの
貴族は健康食品としてシラミを食べていた。黄疸や視力低下の
特効薬として、 トーストにたっぷりと生きたシラミを振りかけ、食べて
いたのである。これはヨーロッパでは伝統的な健康食であり、皆、
その効果を信じてきた。その当時、 ヨーロッパにチフスなどの伝染病
が爆発的に流行したのもこのシラミ食のせいではないか、と言われて
いる。ヨーロッパ人がシラミを食べなくなったのは 二十世紀に入って
からにすぎない。

確かに、シラミの伝染病媒介が発見されたのは 1893 年 [1] になってからだが……。

「伝統的な健康食」だったにしては、唐沢の本の記述をそのまま引き写したような
ページ以外は、ヨーロッパのシラミ食に関する資料が見つからないのは、あまりに
不自然である。

実は上に引用したものと同様な内容が、唐沢商会の『怪体新書』にも載っていて、
その章の参考文献として挙げられているのが『びっくり効果のユニーク健康法事典』
(葉山耕潤・雄鶏社) [2] と『中国医療と漢方』 (鳳卿・毎日新聞社) [3] であるが、
どちらの本も、信じ難い記述があっても信用すべきと判断できそうな専門書ではない。

だいたい、中世ヨーロッパにはシラミ (ノミやハエもだが) が周囲に当たり前に存在
していた [4] のだから、何も貴族限定の健康食にしなくても、誰でも簡単に入手し
食することができたはずだ (食べる気になれば、だが)。

また、上の文章では、「チフスなどの伝染病が爆発的に流行」した「その当時」は、
「十九世紀末」を指しているようだが、19 世紀前半にチフスが大流行したときの
ナポレオン戦役 [5]、19 世紀を後にした第一世界大戦と、「戦争、貧困、飢餓など
社会的悪条件下で流行」[6] というのを裏づける状況で、一部の貴族の健康食など
出る幕はないだろう。

なお、好意的に補完するならば、ゲンゴロウが漢方薬では「竜虱 (リュウシツ)」[7]、
中華料理や台湾料理の食材になることもあるため、一部のヨーロッパ貴族が食して
いた可能性もないではない。名前にシラミがついていても、外見はゴキブリだそうだが。

[1] http://www.microbes.jp/aimai/kurashi/fl171.htm
[2] http://search.newgenji.co.jp/sgenji/D1/?000104211808/
http://www.geocities.co.jp/Beautycare-Venus/5911/page083.html
[3] http://homepage3.nifty.com/didean/che_health.html
[4] http://www.cc.kyoto-su.ac.jp/%7Ekonokatu/nakano(05-1-31)
[5] http://www007.upp.so-net.ne.jp/snakayam/topics_19.html
[6] http://idsc.nih.go.jp/idwr/kansen/k05/k05_09/k05_09.html
[7] http://blog.mag2.com/m/log/0000193357/?KEY=3186&STYPE=1&pageno=4


→ 派生トリビア : ナポレオンの遠征でもシラミとチフスの犠牲者多数とのこと



   
 
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