2008/8/16 1：01
ポルノが哲学だった時代をつくったアレティーノ 『トンデモ一行知識の世界』派生トリビア編
『トンデモ一行知識の世界』 P.95
唐沢俊一のいう「ヴィーナスの姿態」「三十六の体位」はガセビアで、本当は I Modi で
16 体位だぞということについては、「描かれている女性はヴィーナスだけじゃなくて」の
エントリで。
先日の「体位の大意をつかめない……」にも引用した、ブラントームの目撃したという
「二十七の体位（３Ｐなども含む）が描かれていた」画集は実在したかどうかを調べて
いたら、ピエトロ・アレティーノ (Pietro Aretino) の作品としての『体位集』が浮上して
きたので、上記引用部分の派生トリビア扱いとしてメモ。
http://trushnote.exblog.jp/8110347/
＞「哲学者テレーズ」にとどまらず、十七世紀以降、フランス通俗文学の一分野として
＞エロ文学が勢いを振るっていました。性交の体位図に詩を添えたアレチノ「体位集」を
＞始め、ディドロ「不謹慎な宝石」、ヴォルテール「オルレアンの乙女」といったこれらの
＞作品はフランス国内にとどまらず、海を越えてイギリスにまで輸出されています。
＞十七世紀後半の英国喜劇「田舎女房」でもフランス帰りの主人公が「あいにくアレチノ
＞の『体位集』も『娘の学校』の第二部も持ち帰りませんでした」という台詞を述べている
＞ように、当時はこうした作品が大陸土産の定番になっていたわけですね。
アレティーノのソネットと組み合わされたのは、 ロマーノの原画をライモンディが銅版画に
したものだけではなく、木版画等もあった。
http://www.erotomane.org/title/264.asp で 1530 年代のものとされる木版画を、
http://www.erotomane.org/title/65.asp で Wikipedia にも引用されているカラッチ
(Agostino Carracci ) 版を参照できる。 http://www.erotomane.org/author/149.asp
から、その他後世の絵を見ることができ、その中には Paul Avril のものも含まれる。
アレティーノは、『イ・モーディ (I Modi) 』の後に、 『ラジョナメンティ (Ragionamenti)』
という作品も発表していて、こちらも後世に与えた影響は大きい。"Aretinian postures"
という用語は、ヨーロッパ中でアクロバティックなセックスの同義語として使用された。
http://www.libidomag.com/nakedbrunch/archive/europorn01.html
＞ Aretino’s influence on the development of pornography did not end with I modi.
＞ In a work called Ragionamenti, or Discussions, which he published in 1539, two
＞ Roman courtesans discuss what goes on among whores, housewives and nuns
＞ (the conclusion: very much the same -- "they all have sex."). While the dialogue
＞ form is a literary genre with precedents in Greek literature, it was Aretino’s
＞ Ragionamenti that most profoundly influenced the proliferation of this genre over
＞ the next two centuries. These dialogues, which often involved talk about sex
＞ between an older woman and a younger one, weren’t necessarily written for the
＞ purposes of arousal but rather as an excuse to convey information about sex --
＞ as bluntly as possible.
＞ Artists and writers borrowed heavily from the Aretinian tradition long after his
＞ death in 1556. (Even the term "Aretinian postures" became synonymous all over
＞ Europe with the depiction of acrobatic sex.) In effect, Aretino helped to create a
＞ new marketplace for sexually explicit material. With works like I modi and those
＞ following, pornography became closely linked to political and religious subversion.
＞ Aretino also played with another radical concept by evoking a world of limitless
＞ sex in which women expressed their desires as vehemently as men. After his
＞ death in 1556, the term "Aretinian postures" became synonymous all over
＞ Europe with the depiction of acrobatic sex.
ただまあ、1530 年の木版画やカラッチ版が、唐沢俊一のいう「体位の多くは実行不能」
とは考えにくいので、カサノバの話が本当だとしたら、より後世の画家の絵を見ての感想
ではないかと思う (上記リンク先にある絵とか)。
ルネサンス時代にはジュリオ・ロマーノという人物が絵入りで三十六の
体位を「ヴィーナスの姿態」として示したが、かの漁食家カサノヴァによると
この本の中の体位の多くは実行不能、または全然よろしくないものだそうだ。
唐沢俊一のいう「ヴィーナスの姿態」「三十六の体位」はガセビアで、本当は I Modi で
16 体位だぞということについては、「描かれている女性はヴィーナスだけじゃなくて」の
エントリで。
先日の「体位の大意をつかめない……」にも引用した、ブラントームの目撃したという
「二十七の体位（３Ｐなども含む）が描かれていた」画集は実在したかどうかを調べて
いたら、ピエトロ・アレティーノ (Pietro Aretino) の作品としての『体位集』が浮上して
きたので、上記引用部分の派生トリビア扱いとしてメモ。
http://trushnote.exblog.jp/8110347/
＞「哲学者テレーズ」にとどまらず、十七世紀以降、フランス通俗文学の一分野として
＞エロ文学が勢いを振るっていました。性交の体位図に詩を添えたアレチノ「体位集」を
＞始め、ディドロ「不謹慎な宝石」、ヴォルテール「オルレアンの乙女」といったこれらの
＞作品はフランス国内にとどまらず、海を越えてイギリスにまで輸出されています。
＞十七世紀後半の英国喜劇「田舎女房」でもフランス帰りの主人公が「あいにくアレチノ
＞の『体位集』も『娘の学校』の第二部も持ち帰りませんでした」という台詞を述べている
＞ように、当時はこうした作品が大陸土産の定番になっていたわけですね。
アレティーノのソネットと組み合わされたのは、 ロマーノの原画をライモンディが銅版画に
したものだけではなく、木版画等もあった。
http://www.erotomane.org/title/264.asp で 1530 年代のものとされる木版画を、
http://www.erotomane.org/title/65.asp で Wikipedia にも引用されているカラッチ
(Agostino Carracci ) 版を参照できる。 http://www.erotomane.org/author/149.asp
から、その他後世の絵を見ることができ、その中には Paul Avril のものも含まれる。
アレティーノは、『イ・モーディ (I Modi) 』の後に、 『ラジョナメンティ (Ragionamenti)』
という作品も発表していて、こちらも後世に与えた影響は大きい。"Aretinian postures"
という用語は、ヨーロッパ中でアクロバティックなセックスの同義語として使用された。
http://www.libidomag.com/nakedbrunch/archive/europorn01.html
＞ Aretino’s influence on the development of pornography did not end with I modi.
＞ In a work called Ragionamenti, or Discussions, which he published in 1539, two
＞ Roman courtesans discuss what goes on among whores, housewives and nuns
＞ (the conclusion: very much the same -- "they all have sex."). While the dialogue
＞ form is a literary genre with precedents in Greek literature, it was Aretino’s
＞ Ragionamenti that most profoundly influenced the proliferation of this genre over
＞ the next two centuries. These dialogues, which often involved talk about sex
＞ between an older woman and a younger one, weren’t necessarily written for the
＞ purposes of arousal but rather as an excuse to convey information about sex --
＞ as bluntly as possible.
＞ Artists and writers borrowed heavily from the Aretinian tradition long after his
＞ death in 1556. (Even the term "Aretinian postures" became synonymous all over
＞ Europe with the depiction of acrobatic sex.) In effect, Aretino helped to create a
＞ new marketplace for sexually explicit material. With works like I modi and those
＞ following, pornography became closely linked to political and religious subversion.
＞ Aretino also played with another radical concept by evoking a world of limitless
＞ sex in which women expressed their desires as vehemently as men. After his
＞ death in 1556, the term "Aretinian postures" became synonymous all over
＞ Europe with the depiction of acrobatic sex.
ただまあ、1530 年の木版画やカラッチ版が、唐沢俊一のいう「体位の多くは実行不能」
とは考えにくいので、カサノバの話が本当だとしたら、より後世の画家の絵を見ての感想
ではないかと思う (上記リンク先にある絵とか)。
