トンデモない一行知識の世界 OLD - 唐沢俊一の「雑学」とは -

一部で有名な唐沢俊一の一行知識に、ツッコミを入れたり派生トリビアを書いたり。
「愚かで分別のない人と思われたいなら、唐沢俊一のトリビアを引用しなさい。」

 
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2008/8/13  2:30

体位の大意をつかめない……  『トンデモ一行知識の世界』間違い探し編

『トンデモ一行知識の世界』 P.94
 この当時は売春婦がセックス指南の書を書いたらしく、高級娼婦であった
エレファンティスやキレーネなどという女性の著書は長いこと、ギリシアに
おけるハウツーセックス本として流布したらしい。キレーネの本における体位
の数は十二だそうで、これくらいなら、という気にさせる。

キュレネさんって綺麗ね、かしら」のエントリと同じ箇所の引用。あちらには、有名な遊女
の名前としてアリストパネスの『蛙』に書かれているのは、「キレーネ」ではなく「キュレネ」
または「キュレネー」というべきで、彼女が「セックス指南の書を書いた」とは伝えられて
いないようだと書いた。

で、もう一人の「エレファンティス」の綴りは Elephantis であり、彼女は「sex manual」の
著書として伝えられている (彼女の書いた文章は残っていない) が、高級娼婦ではなく
詩人だったようだ。

http://en.wikipedia.org/wiki/Elephantis
> Elephantis or Elephantine was a Greek poetess apparently renowned in the
> classical world as the author of a notorious sex manual. Her works have not
> survived.


要するに、娼婦であったがセックス指南書は書いていないキュレネと、セックス指南書と
いえる本を書いた詩人のエレファンティスとを、2 人とも「セックス指南の書を書いた
高級娼婦」ということにしてしまったのではないか。

ちなみに、エレファンティスさんは、著書の中に 9 種類の体位を記載したという説もある。

http://en.wikipedia.org/wiki/Elephantis
> ("Such verses as neither the daughters of Didymus know, nor the debauched
> books of Elephantis, in which are set out new forms of lovemaking.") "Novae
> figurae" has been read as "novem figurae" (i.e., "nine forms" of lovemaking,
> rather than "new forms" of lovemaking), and so some commentators have
> inferred that she listed nine different sexual positions.


さらに、Bette Talvacchia 著『Taking Positions』によると、16 世紀の時代、Elephantis
は、セックスの体位の手引き書や、その挿絵と同義だったとのこと。16 世紀後半には、
ピエール・ブラントーム (Pierre de Brantôme) が、エレファンティス、図、体位、本、
I Modi とアレティーノの関連について言及している。

http://books.google.com/books?id=s3_-Qd8KvbsC&pg=PA54&vq= Elephantis&as_brr=3&hl=ja&source=gbs_search_r&cad=0_1
> Althrough the actual text of Elephantis is unknown, her name was synonymous
> in the sixteenth century with manuals of sexual positions and, by extension,
> with their pictorial representation.

> An astute observer and commentator from the late sixteenth century, Pierre
> de Brantôme, takes for granted the association of Elephantis, figures,
> sexual positions, books, I modi and Aretino, and refers to it in knowing, if slightly
> jumbled, way.


唐沢俊一の『トンデモ一行知識の世界』には、エレファンティス、ジュリオ・ロマーノの
挿絵付き体位画集 ( I Modi のこと。唐沢俊一のいう「ヴィーナスの姿態」はガセビア)、
ブラントームがそれぞれ登場するが、それらの関連についてはいっさい語られていない。

『トンデモ一行知識の世界』 P.95
 十六世紀末にフランスの作家ブラントームが記録しているところでは、
当時、男性から女性に体位画集をプレゼントするのが流行っていたそうで、
彼が見たものの中には二十七の体位(3Pなども含む)が描かれていた
そうである。

I Modi については、「描かれている女性はヴィーナスだけじゃなくて」のエントリを参照
のこと。その本のソネットの方を書いていたのが、ピエトロ・アレティーノ。



   
 
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