トンデモない一行知識の世界 OLD　- 唐沢俊一の「雑学」とは -

『トンデモ一行知識の世界』 P.150

　彼の発明した拷問器具はいまでもスペインの王立博物館に展示されて
いるが、その中には、“魔女のくつばみ”と呼ばれる、鉄製の仮面もある。
見かけはただの仮面ではあるが、その裏面（顔につく面）には口の部分に、
男性の性器の形をした棒が突き出ている。これをかぶせられた魔女、いや、
魔女の疑いをかけられた女性は、口の中にこの鉄製のペニスが突っ込まれ、
舌とのどを押さえつけられる。したがって、いくら拷問を受けても、悲鳴ひとつ
あげることができない。そして、この、悲鳴をあげないということが魔女である
という証拠となったのだからひどいものである。

「彼の発明した」の「彼」とは、スペインの異端審問所長官トマス・デ・トルケマダ (唐沢俊一の
いう「十五世紀スペインの初代宗教裁判所長、トルケマダ」) のこと。

「"魔女のくつばみ"」とダブルクォートつきでググると、唐沢俊一の上記文章をそのまま
コピペしたような文章 2 つと、「うるさい鉄の桃じゃなくて熱した鉄の三位一体 Trinity」
でも言及した、山田風太郎の『銀河忍法帖』からの引用くらいしかひっかからない。

で、やはり先のエントリのときと同様、拷問道具の画像いっぱいのサイトを調べてみた。

- http://atheisthaven.blogspot.com/2007/10/missionarys-penultimate-gift-to-mankind_04.html
- http://www.jesusneverexisted.com/murderers.htm
- http://torture.justsickshit.com/torture-in-the-medieval-timessickly/
- http://www.francesfarmersrevenge.com/stuff/archive/torture/devices.htm
- http://www.geocities.com/christprise/holy-inquisitions.html
- http://www.geocities.com/christprise/holy-inquisitions-2.html
- http://www.geocities.com/christprise/holy-inquisitions-3.html

しゃべらせないようにする鉄製の仮面系の拷問道具となると、以下の 2 つのどちらかと
なるようだ。

・ The Branks (Scold's Bridle) [1][2]
　 Brank (口かせ) または Scold's Bridle (口やかましい女のくつわ) と呼ばれた、鉄製の
　 猿ぐつわ。名前の通り、口やかましい主婦を罰するために使用された。
　 通常は頭部を固定する鉄の檻のような形をしていて、口の中に入れるための金属製の
　 突起があった。舌に触れるこの突起には、釘や小さな歯車がついていることがしばしば
　 で、犠牲者がしゃべれないようにしていた。16 世紀のスコットランドが発祥で、イギリス
　 やアメリカへと広まった。

・ The torture mask (“mask of infamy”) [3]
　 torture mask (拷問の仮面) または mask of infamy (悪評の仮面) と呼ばれた、鉄製の
　 仮面。これをつけられた者は、公共の場で嘲笑の対象となると同時に、物理的な拷問
　 もされた。
　 この仮面はボールのような内部装置をもつことがあって、犠牲者の女性が嘆き悲しんで
　 金切り声を出したりすることを防止するために、そのボールを口または鼻の穴の中に
　 入れて使用した。
　 長い耳のついた仮面は、その人間がロバのように愚かな人間であることを示し、大きく
　 突き出た鼻や豚の顔の形は、汚いと考えられていた動物を象徴させていた。

どちらも「男性の性器の形をした棒」は使用していない。また、スペインのトルケダマが異端
審問に使用したかどうか疑問である。

[1] - http://www.francesfarmersrevenge.com/stuff/archive/torture/devices.htm
＞ The Branks, or Scold's Bridle, is a sort of metal gag, which was principally used
＞ on scolding housewives. It was typically fashioned as a cage that locked onto the
＞ head, aided by a metal protrusion that fit into the mouth. This tongue-piece was
＞ often enhanced with spikes or a rowel (small spiked wheel) to discourage attempts
＞ to speak. They appear to have originated in Scotland in the 16th century and
＞ passed from there to England and thence to the Americas, although there is
＞ some evidence that a type of branks may have been used even earlier

[2] - http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?enc=UTF-8&p=Brank&stype=0&dtype=1
＞branks[ brks ]
＞[名]（昔口やかましい女に罰として頭からかぶせて口にかませた鉄製の）口かせ, くつわ.

[3] - http://torture.justsickshit.com/torture-in-the-medieval-timessickly/
＞ The torture mask or “mask of infamy”
＞ The mask of infamy brings about two different inflictions: a spiritual one and
＞ a physical one. The victims were both staked out to public ridicule and at the
＞ same time they were physically
＞ tortured.
＞ The masks sometimes may have had inner devices, such as a ball, which were
＞ forced into the victim’s nose or into the mouth, thus preventing him or her
＞ from wailing and shrieking.
＞ The mask with long ears represented a silly ass person, while the one with
＞ a snout or with a pig face symbolizes the animal being considered dirty.