トンデモない一行知識の世界 OLD　- 唐沢俊一の「雑学」とは -

『トンデモ一行知識の世界』 P.90

　これは、イザナギ・イザナミの神話に出ていることだ。『古事記』によれば、
ふたりが、子孫をつくるためにセックスしよう、と思ったとき、何しろ人類史上
初めてのことで、やり方を知らなかった。マゴマゴしているふたりのところに、
高天原から使いのセキレイのつがいが飛んできて、セックスのやり方を
ふたりに教えた。鳥が教えたわけだから、当然、人類最初のセックスは
後背位だったと想像できるわけである〈略〉
　ともあれ、一回ソノ味を覚えてからのふたりのやりまくりといったらすさまじい
もので、江戸川柳に
「セキレイも　一度教えて呆れ果て」
　というのがあるくらい。

×『古事記』　○『日本書紀』
×子孫をつくるために　○国を生むために
×人類史上初めてのこと　○神様にとっても初めてのことで
×高天原から使いのセキレイのつがいが飛んできて　○セキレイが飛んできて
×人類最初のセックスは　○日本の神の最初のセックスは
×セキレイも　○セキレイは

セキレイが出てくるのは『日本書紀』の異本で、『古事記』には登場しない。『日本書紀』
には、「時有鶺鴒飛來搖其首尾。二神見而學之。」としか書いていないので、「高天原
から使いの」「つがい」は余分な装飾。

また、国産みの神話ともいうように、「子孫をつくるために」ではなくて、まず国土を生む
ためにやりましょうということだった。神を生むのはその次。四国、九州、本州などの島を
生んでいくという真似ができたのは、そもそもイザナギとイザナミが神様だったからで、
「人類史上初めて」「人類最初のセックス」というのは、もののたとえとしても違和感が
あり過ぎる。

http://homepage1.nifty.com/o-mino/page316.html
＞第五　◆一書曰。陰神先唱曰。美哉。善少男。時以陰神先言故爲不祥。更復改巡。
＞則陽神先唱曰。美哉。善少女。遂將合交而不知其術。時有鶺鴒飛來搖其首尾。
＞二神見而學之。即得交道。

http://ja.wikipedia.org/wiki/国産み
＞国産み（くにうみ）とは、日本の国土創世譚を伝える神話である。 イザナギとイザナミ
＞が天の橋にたち矛で混沌をかき混ぜ島をつくる。また、『古事記』などではそののち
＞2神で島を産んだというものである。

で、「セキレイで重要なのはセナカよりも上下運動?」のエントリの方にも書いたけれど、
2 神がやり方がよくわからなくてまごついているところに、セキレイが尾を上下するのを
見て「これだ」と思った次第であって、セキレイのつがいが交尾を実践したのを見て真似
したわけではないから、「最初のセックスは後背位だった」という唐沢俊一の説は、実は
説得力がないものである。

http://www8.ocn.ne.jp/%7Egiyoh/senryu-3.htm
＞　これが日本書紀の異本によると、このときご両人ファックの仕方がわからなくてマゴ
＞ついていたという。そこへ一羽のセキレイが飛んできて、シッポをふって教えたという
＞から笑わせる。
＞　　　　鶺鴒(せきれい)は極秘を神へ伝授なり
＞　　　　鶺鴒は一度教えてあきれ果て
＞　　　　知りきっているに鶺鴒馬鹿なやつ

なお、唐沢俊一は、「セキレイも　一度教えて呆れ果て」と書いているけど、これは上の
引用のように「鶺鴒は」の方が正しいだろう。ついでにいえば、他にも面白い川柳がある
のに、ここでも『東大オタク学講座』でも、「一度教えてあきれ果て」のみを使い回すという
のはもったいないような気がする。

http://www.tante2.com/senryu-rekishi.htm
＞あまったを　不足へたして人はでき
＞かよう遊ばせと　セキレイ びくつかせ
＞セキレイは　一度教えてあきれはて
＞朕はもう　崩御崩御とのたまえり
＞あれいっそ　神去りますと橋の上

その他参考 URL :
- http://www.let.osaka-u.ac.jp/%7Eokajima/kojiki1.txt