2009/1/24 10:43
バナナの皮ですべってころぶのは、そんなバカナ話ではない 『トンデモ一行知識の逆襲』間違い探し編
『トンデモ一行知識の逆襲』 P.69 ~ P.70
唐沢俊一は、高校生のとき、本当にバナナの皮ですべるのか実験してみたという。結果
は失敗で、角度を変えるなどいろいろしても全然すべらない。では、バナナですべるという
古典的なギャグは「完全に空想の世界」なのか、「いや、この謎は、やがてバナナの知識
を深めるにしたがって解明されていった」 (P.68) という。そして、その謎の解明とやらが、
上に引用した文章。
まあ、読者にとっては、謎は解明されるどころか深まっていくだけのような気もするが。
「南方での戦地経験のある担任」や水木しげるが、バナナの黒くなったところがおいしい
といっていた――というのまではよいとして、そこから一気に、「南方において、バナナと
いうものは身も皮もぬるぬるになるまで完熟させ、柔らかくして食べるもの」とまで飛躍さ
れても、少し困る。
そして、唐沢俊一は、「戦前の南方において、バナナの皮にすべって転ぶ、という光景
は日常的に目にするものだった」、「このイメージが強烈に頭に焼き付」いて、バナナの
「皮を踏めばすべる、という考え方が定着してしまった」と推測する。日常的に目にし、
頭に焼き付かせた人たちとは、担任や水木しげるのような「南方での戦地経験」のある
者をさすのだろうか。彼らの頭に強烈に焼き付いたからといって、ギャグの定番になる
ほど一般的な共通認識になるのか疑問だし、「戦前の南方」というのも変で「戦時中の
南方」というべきだろう。南方に住む現地の人たちが主語の可能性も考えたが、それなら
戦前も戦後もない話。
まあ、バナナの皮ですべるというギャグの起源を、唐沢俊一と違ってちゃんと調べた人が
いて、それによるとこのネタは、カル・スチュワート (Cal Stewart) が小話のネタに使った
1900 年前後までさかのぼることができる (下記引用で言及されている通り、英語の
Wikipedia http://en.wikipedia.org/wiki/Banana によると 1906 年)。そしてこのネタを
世界中に広めたと思われるのが 1915 年のチャップリンの映画。
http://d.hatena.ne.jp/hidematu/20080511/1210498441
>最初に「バナナの皮で滑って転ぶ」というネタを考えて小話(レコード)で公開したの
>は、カル・スチュワート氏ということになる。時期はプロモーションが1898年で、正式リ
>リースが1901年。(Wikipediを信じるなら1906年)
>また、「バナナの皮で滑って転ぶ」を実演して見せたのは、チャップリンで、映画のタイ
>トルは「アルコール先生海水浴の巻」(公開は1915年)。この映画がきっかけでネタが
>日本中(たぶん、世界中)に広まったと思われる。
つまり、唐沢俊一のいうような第二次世界大戦中の「南方での戦地経験」がベースに
なっているという説をとるためには、相当時空を歪ませる必要がある。
また、これも唐沢俊一の調査というか実験結果とは食い違うのだが、実際にバナナの皮
ですべった人の報告は、ネット上に多数存在する。
http://ameblo.jp/syumi2/entry-10012429155.html
>それではいよいよ、バナナの皮を踏んでみようと思います。
>その結果を短いムービーでご覧下さい。
>地味にビックリしてます。
>「バナナの皮なんて本当は滑らないんだろ?」というスタンスで突き進んでしまったた
>め、思いのほか滑ってビックリしたのです。
上に引用したような実験してみた人もいるし、不運な事故ですべって怪我した人もいる。
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1214279342
>深刻なダメージを負って遅刻したのに素直に理由を言ったら『本当のことを言いなさ
>い』と逆に怒られたのは悲しい思い出です。
>その後本当にバナナの皮ですべってころんで負傷したと信じてもらえたら今度は大爆
>笑でしたが。
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1215986387
>主人が余程空腹だったとみえて、浴槽の中でバナナを食べたのです。
>そして入り口にバナナの皮を置いていたのを、忘れて上がってきたのです。
>それを知らない私は裸になり、浴槽の電気のスイッチを入れると同時に、右足でバナ
>ナの皮をふんでしまい、仰向けにスッテンコロリン!
>脱衣所と浴槽の段差で、背中を強打して激痛が走りました。
>次の日、病院に行ったら、肋骨2本にヒビが入っていました。
>理由はバナナの皮とは言えずに、石鹸と言いました。
>
>私も漫画やコントの世界だけだと思っていましたが、実際に経験してみたら本当に良く
>滑ります。
要するに、バナナの皮ですべるためには、唐沢俊一が想像 (妄想) するように「身も皮も
ぬるぬるになるまで完熟させ」たバナナである必要はない、と。
http://jvsc.jst.go.jp/find/sports/s02_sld/d2_mech/m40_tx.htm
> 古典的ないたずらで、床にバナナの皮を置いて滑って転ばせるというのがあります
>が、なぜバナナの皮で人は滑るのでしょうか?
> 人は歩くときに本能で、足の裏と地面の間の摩擦を上手に利用しています。ところ
>が、突然バナナの皮が置いてあったり、道の1カ所だけに氷が張っていたりすると、本
>能で予想していた摩擦よりも小さく、足の裏に摩擦がはたらかないために足がすべる
>からです。
> つまりバナナの皮は、物と物との間にぬって摩擦を小さくできる油と同じはたらきを
>しているのです。
http://questionbox.jp.msn.com/qa174731.html
>以前TVで見たんだと思いますが、実験でやっていました。そのときは、皮の内側
>(白い方)と、外側(黄色い方)の両方でやっていました。結果は・・・すべってました。
>で、その理由なんですが、内側は、残ってた実がつぶれて滑る。外側は、皮から出る
>油で滑る、と言うことでした。
本当にバナナの皮ですべるのか、あれはギャグのお約束でしかないのではないかと
疑う人が少なくない理由は、幸いなことにバナナの皮が落ちていることなどそうそうない
ためと思われる。
その他参考 URL:
- http://blog.zaq.ne.jp/kiriyama/article/14/
- http://okwave.jp/qa174731.html
関連ガセビア:
・バナナにではなく時間にスベってタイムスリップ
私の小学校時代までは、バナナといえばこの台湾バナナであった。給食
にこのバナナが出たことがあり、私やクラスの子供たちが痛んだところを
捨てようとすると、南方での戦地経験のある担任が、
「バナナはその黒くなったところがおいしいんだ」
と言った。水木しげるも同じことを言っていた。南方において、バナナと
いうものは身も皮もぬるぬるになるまで完熟させ、柔らかくして食べるもの
なのだ。
そう。そこまで柔らかくなったバナナなら、皮を踏んづけた場合、ずるりと
すべって、人ひとりくらい、スッテンコロリとさせられないこともあるまい。
また、色も全体的に茶色になっているから、地面の上に落ちていてもちょっ
と見には気がつかないだろう。
戦前の南方において、バナナの皮にすべって転ぶ、という光景は日常的
に目にするものだったと思われる。このイメージが強烈に頭に焼き付き、
人の頭に、熟していないバナナでも(アメリカでもバナナはまだ完熟に至って
いない状態で食べるのが習慣化されている)皮を踏めばすべる、という考え
方が定着してしまったのだろう。
唐沢俊一は、高校生のとき、本当にバナナの皮ですべるのか実験してみたという。結果
は失敗で、角度を変えるなどいろいろしても全然すべらない。では、バナナですべるという
古典的なギャグは「完全に空想の世界」なのか、「いや、この謎は、やがてバナナの知識
を深めるにしたがって解明されていった」 (P.68) という。そして、その謎の解明とやらが、
上に引用した文章。
まあ、読者にとっては、謎は解明されるどころか深まっていくだけのような気もするが。
「南方での戦地経験のある担任」や水木しげるが、バナナの黒くなったところがおいしい
といっていた――というのまではよいとして、そこから一気に、「南方において、バナナと
いうものは身も皮もぬるぬるになるまで完熟させ、柔らかくして食べるもの」とまで飛躍さ
れても、少し困る。
そして、唐沢俊一は、「戦前の南方において、バナナの皮にすべって転ぶ、という光景
は日常的に目にするものだった」、「このイメージが強烈に頭に焼き付」いて、バナナの
「皮を踏めばすべる、という考え方が定着してしまった」と推測する。日常的に目にし、
頭に焼き付かせた人たちとは、担任や水木しげるのような「南方での戦地経験」のある
者をさすのだろうか。彼らの頭に強烈に焼き付いたからといって、ギャグの定番になる
ほど一般的な共通認識になるのか疑問だし、「戦前の南方」というのも変で「戦時中の
南方」というべきだろう。南方に住む現地の人たちが主語の可能性も考えたが、それなら
戦前も戦後もない話。
まあ、バナナの皮ですべるというギャグの起源を、唐沢俊一と違ってちゃんと調べた人が
いて、それによるとこのネタは、カル・スチュワート (Cal Stewart) が小話のネタに使った
1900 年前後までさかのぼることができる (下記引用で言及されている通り、英語の
Wikipedia http://en.wikipedia.org/wiki/Banana によると 1906 年)。そしてこのネタを
世界中に広めたと思われるのが 1915 年のチャップリンの映画。
http://d.hatena.ne.jp/hidematu/20080511/1210498441
>最初に「バナナの皮で滑って転ぶ」というネタを考えて小話(レコード)で公開したの
>は、カル・スチュワート氏ということになる。時期はプロモーションが1898年で、正式リ
>リースが1901年。(Wikipediを信じるなら1906年)
>また、「バナナの皮で滑って転ぶ」を実演して見せたのは、チャップリンで、映画のタイ
>トルは「アルコール先生海水浴の巻」(公開は1915年)。この映画がきっかけでネタが
>日本中(たぶん、世界中)に広まったと思われる。
つまり、唐沢俊一のいうような第二次世界大戦中の「南方での戦地経験」がベースに
なっているという説をとるためには、相当時空を歪ませる必要がある。
また、これも唐沢俊一の調査というか実験結果とは食い違うのだが、実際にバナナの皮
ですべった人の報告は、ネット上に多数存在する。
http://ameblo.jp/syumi2/entry-10012429155.html
>それではいよいよ、バナナの皮を踏んでみようと思います。
>その結果を短いムービーでご覧下さい。
>地味にビックリしてます。
>「バナナの皮なんて本当は滑らないんだろ?」というスタンスで突き進んでしまったた
>め、思いのほか滑ってビックリしたのです。
上に引用したような実験してみた人もいるし、不運な事故ですべって怪我した人もいる。
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1214279342
>深刻なダメージを負って遅刻したのに素直に理由を言ったら『本当のことを言いなさ
>い』と逆に怒られたのは悲しい思い出です。
>その後本当にバナナの皮ですべってころんで負傷したと信じてもらえたら今度は大爆
>笑でしたが。
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1215986387
>主人が余程空腹だったとみえて、浴槽の中でバナナを食べたのです。
>そして入り口にバナナの皮を置いていたのを、忘れて上がってきたのです。
>それを知らない私は裸になり、浴槽の電気のスイッチを入れると同時に、右足でバナ
>ナの皮をふんでしまい、仰向けにスッテンコロリン!
>脱衣所と浴槽の段差で、背中を強打して激痛が走りました。
>次の日、病院に行ったら、肋骨2本にヒビが入っていました。
>理由はバナナの皮とは言えずに、石鹸と言いました。
>
>私も漫画やコントの世界だけだと思っていましたが、実際に経験してみたら本当に良く
>滑ります。
要するに、バナナの皮ですべるためには、唐沢俊一が想像 (妄想) するように「身も皮も
ぬるぬるになるまで完熟させ」たバナナである必要はない、と。
http://jvsc.jst.go.jp/find/sports/s02_sld/d2_mech/m40_tx.htm
> 古典的ないたずらで、床にバナナの皮を置いて滑って転ばせるというのがあります
>が、なぜバナナの皮で人は滑るのでしょうか?
> 人は歩くときに本能で、足の裏と地面の間の摩擦を上手に利用しています。ところ
>が、突然バナナの皮が置いてあったり、道の1カ所だけに氷が張っていたりすると、本
>能で予想していた摩擦よりも小さく、足の裏に摩擦がはたらかないために足がすべる
>からです。
> つまりバナナの皮は、物と物との間にぬって摩擦を小さくできる油と同じはたらきを
>しているのです。
http://questionbox.jp.msn.com/qa174731.html
>以前TVで見たんだと思いますが、実験でやっていました。そのときは、皮の内側
>(白い方)と、外側(黄色い方)の両方でやっていました。結果は・・・すべってました。
>で、その理由なんですが、内側は、残ってた実がつぶれて滑る。外側は、皮から出る
>油で滑る、と言うことでした。
本当にバナナの皮ですべるのか、あれはギャグのお約束でしかないのではないかと
疑う人が少なくない理由は、幸いなことにバナナの皮が落ちていることなどそうそうない
ためと思われる。
その他参考 URL:
- http://blog.zaq.ne.jp/kiriyama/article/14/
- http://okwave.jp/qa174731.html
関連ガセビア:
・バナナにではなく時間にスベってタイムスリップ
2009/1/25 14:51
投稿者:金平糖
2009/1/25 13:12
投稿者:トンデモない一行知識
http://tondemonai2.web.fc2.com/
http://tondemonai2.web.fc2.com/
ああ、なるほど。唐沢俊一が「痛んだところ」(という言い方もどうか
と思いますが)、「完熟」などといっている、色が茶色っぽく濃くなり
「ぬるぬる」になった状態のバナナのことを、「黒くなった」と表現
すると確かにスイートスポットとまぎらわしいかも。
「変色した」くらいならともかく、本当に黒くなってしまうまで放置
していたら、そりゃ完熟とかそういう問題ではなく、本気で腐ってい
るというにふさわしい状態でしょうし……。
http://www.oride.net/trivia/trivia232-241.htm#235
>No.235 バナナの皮にある黒いシミの名前は「シュガースポット」
>(番組評価 42/100へえ)
>
>「シュガースポット」は熟成が進んだバナナの皮に現れる黒い斑点
>で、バナナの中のでんぷんが糖になるため甘くなります。
と思いますが)、「完熟」などといっている、色が茶色っぽく濃くなり
「ぬるぬる」になった状態のバナナのことを、「黒くなった」と表現
すると確かにスイートスポットとまぎらわしいかも。
「変色した」くらいならともかく、本当に黒くなってしまうまで放置
していたら、そりゃ完熟とかそういう問題ではなく、本気で腐ってい
るというにふさわしい状態でしょうし……。
http://www.oride.net/trivia/trivia232-241.htm#235
>No.235 バナナの皮にある黒いシミの名前は「シュガースポット」
>(番組評価 42/100へえ)
>
>「シュガースポット」は熟成が進んだバナナの皮に現れる黒い斑点
>で、バナナの中のでんぷんが糖になるため甘くなります。
2009/1/24 23:44
投稿者:はりはり亭
私も実はバナナの皮ですべるか試してみたことがあります。結果は失敗で、いっこうに滑りませんでした。ただ、今思い起こすと砂も土ぼこりもあるアスファルトの道路の上でやっていたので、滑るわけないんですね。私は今回の文章は初見ですが、私のような経験を持った人がうっかり唐沢の文章を信じてしまう、ということはありえそうですね。
あと、「バナナの黒いところ」の話はバナナの「スイートスポット(シュガースポット)」の話との混同があるのではないでしょうか。
あと、「バナナの黒いところ」の話はバナナの「スイートスポット(シュガースポット)」の話との混同があるのではないでしょうか。
2009/1/24 22:29
投稿者:ゲゲゲの
はじめまして、いつも興味深く読んでいます。
ちょっと気になったのですが水木しげる先生が貧しかったころ
よく食べていたのは「黒いバナナ」ではなく「変色したバナナ」だっ
たそうです。
夫人である武良布枝さんの「ゲゲゲの女房」にもさすがに腐ったバナ
ナは食べていないと書かれています。ごく稀に真似してお腹を壊す人
がいるそうなのでご用心。
これからも頑張ってください。
ちょっと気になったのですが水木しげる先生が貧しかったころ
よく食べていたのは「黒いバナナ」ではなく「変色したバナナ」だっ
たそうです。
夫人である武良布枝さんの「ゲゲゲの女房」にもさすがに腐ったバナ
ナは食べていないと書かれています。ごく稀に真似してお腹を壊す人
がいるそうなのでご用心。
これからも頑張ってください。
硬いつるつるの床なら格段に滑ります
大理石等の石の床、目の細かいコンクリートなど
逆に油をまいても滑らないようなところ
ザラザラの地面、粗い砂の地面などはバナナの皮を踏んでも滑りにくいです
が、それでも皮がつぶれる事で予想外のズレが生じるため
こういった地面でもバランスを崩してこけたりします
意識して踏んだ場合わずかに足がずれても平気ですが
普通に歩いていて足がふいにずれるとそれだけで転べます
人はわずかな段差やちょっとした小石程度でも大きくバランスを崩すものです