トンデモない一行知識の世界 OLD - 唐沢俊一の「雑学」とは -

一部で有名な唐沢俊一の一行知識に、ツッコミを入れたり派生トリビアを書いたり。
「愚かで分別のない人と思われたいなら、唐沢俊一のトリビアを引用しなさい。」

 
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2009/1/11  14:30

閃光そして電波には何かと縁が深かったニコラ・テスラ  『トンデモ一行知識の逆襲』間違い探し編

『トンデモ一行知識の逆襲』 P.142
 天才が知能テストで発見できにくい理由のひとつは、最近の研究で、
天才的思考というのは画像によるイメージ力に依存しているからでは
ないか、といわれていることに関係があるかもしれない。電気の研究で
エジソンを超える天才といわれたニコラ・テスラは、発明のアイデアを
思いつくと、頭の中ですべての部品が組み合わさり、それが動く様子が
イメージできたという。にもかかわらず、テスラの学校時代の絵の成績
は悪かった。あまりに細部まで描写しようとするので、たいてい、図画の
時間中に完成しないままになってしまったのである。所詮、天才は学校
には似合わないもの、なのかもしれない。

知能検査以外のテストでも総合点では今いちだった天才ポアンカレ」のエントリーで
引用した文章の続き。ポアンカレが理工科大学校 (Ecole Polytechnique) の入学試験
の製図テスト (drawing test) で 0 点をとったという話を知ってか知らずか、「天才的思考
というのは画像によるイメージ力に依存している
」と、さらりといってのけるのは何か凄い
なあと思うけど。そうでなくても、「画像によるイメージ力」なんて、どんなタイプの天才でも
そなえているものとは限らないとも思うし。

それはさておき、ニコラ・テスラ (Nikola Tesla) については、唐沢俊一のいっていることが
全部本当だとしても、話の筋道がよくわからないという問題がある。

図画の時間中に完成」しないほど「細部まで描写しようとする」性格だったら、確かに
学校時代の絵の成績」は悪くなるかもしれないが、その性格が知能検査のどのような
検査項目にどう影響を与えるだろうといいたいのかが、はっきりしない。「天才は学校に
は似合わない
」などと、大ざっぱなことだけいって終わりにされても困るというか……。
それも、後年画家になったわけでもないテスラの、絵の成績が悪かったくらいのことで。

で、実際のニコラ・テスラはどういう人だったかというと、「発明のアイデアを思いつくと、
頭の中ですべての部品が組み合わさり、それが動く様子がイメージできた
」については、
下記のような資料もあるし、特に間違っていないのだろう。

http://www.asahi-net.or.jp/%7Eve3m-snd/biography.html
> 啓示が訪れたのは、最初の発想から五年あまりたった1882年冬のことである。
>当時、彼はブタペストの国営電話局に技師として勤務していた。いつものように友人と
>公園を散策しながら、ゲーテの『ファウスト』の一節を暗唱していると、突然アイデアが
>閃光のように訪れた。
> テスラは立ち止まり、そばに落ちていた木の枝で地面に図を描き、友人にこう言った
>という。「さあ、これがぼくのモーターだよ」
> こうして彼の交流モーターは完成したのである。


ちなみに、上に引用した文章を書いた新戸雅章は、テスラについて何冊か本を出して
いる専門家。「六〇年代のハルマゲドン -UFO教団CBAの興亡―」が唐沢俊一の
『新・UFO入門』のパクリ元のひとつとして指摘された
のを受けて、自ブログでの意見
表明
もしている。

http://d.hatena.ne.jp/keyword/%BF%B7%B8%CD%B2%ED%BE%CF
>新戸雅章
>作家。1948年神奈川県藤沢市生まれ。主な著書に「テスラ―発明的想像力の謎」
>「超人ニコラ・テスラ」「ニコラ・テスラ未来伝説」「発明帝王の遺産」「バベッジのコン
>ピュータ」などがある。


話をテスラに戻すと、その場で「そばに落ちていた木の枝で地面に図を描き」、友人に
これがぼくのモーターだよ」と話すのは、「あまりに細部まで描写しようとするので、たい
てい、図画の時間中に完成しないまま
」だったという人物らしくはないような。

そもそもテスラは、「天才が知能テストで発見できにくい」という話の流れで取り上げる
のに適切な人物とは言い難い。テスラの生まれたのは 1856 年で、幼少の頃にビネー
開発の知能検査 (1905 年) は当然受けていないが、小学校に入った頃から神童の名を
ほしいままにしていたテスラが、知能検査を含む各種のテストで、頭角をあらわさなかっ
ただろうと考える理由はないのだ。
(小学校では劣等生だったエジソンの方がこの題材には向いていたんじゃないかとも思う)。

http://ja.wikipedia.org/wiki/ニコラ・テスラ
>兄を喪った5歳の頃から幻覚を頻繁にみたと共に、「テスラ以上の神童」と呼ばれた
>兄を上回るために勉学に励み、特に数学において突出した才能を発揮したとされる。


http://corrosion-doctors.org/Biographies/TeslaBio.htm (翻訳)
> From the time he was a child, Tesla was always considered eccentric. During his
> early life, Tesla was stricken with illness time and time again. He suffered a
> peculiar affliction in which blinding flashes of light would appear before his eyes,
> often accompanied by hallucinations. The flashes and images caused Tesla great
> discomfort, and by the time he reached his teens he had taught himself to
> repress them from occurring except in certain times of stress.


http://www.asahi-net.or.jp/%7Eve3m-snd/witticism.html
>★わたしは映像の出現が引き起こす特異な葛藤に悩まされていたが、それはたいて
>いの場合、現実の物体をおおい隠し、思考と行動を妨げる強烈な閃光をともなった。
>映像は以前に見た現実の物体や景色で、絶対に想像の産物ではなかった。言葉を
>聞くと、指示された物体の映像が目の前にありありと浮かび、自分が見ているのが、
>現実かどうか区別できなることがあった。これは非常な不快と不安をもたらした。
>(1919年)


http://socyo.high.hokudai.ac.jp/LSci07/Tesla.htm
>テスラは特にこの母の形質を受け継いでか、超人的な記憶力のほか、頭の中でイメ
>ージしたことがあたかも実在するかのように目の前に現れ、本人にもそれが現実のも
>のなのか自分のイメージが作り出した幻影なのか区別ができなかったといいます。
〈略〉
>苦手だった図画の科目以外は全てトップクラスの成績を残し、特に数学においては、
>先ほど説明したイメージ能力を駆使して、問題が与えられた瞬間には答えを見つけ
>出していました。


閃光をともなう幻覚、テスラ本人にも現実かそうでないか区別のつかない映像の出現
といった、恐るべきイメージ想起力 (および、それにともなう多大な苦痛) それ自体は、
面談でも実施しない限り、知能検査のようなテストでは検出できないものかもしれない。
しかし、テスラの知性は、数学の問題を一瞬で解くときなどに、イメージ能力をいかす
ことを可能にしていた。これはテストでも充分測定可能な能力となる。

ところで、テスラと閃光 (Flash) の幻覚といって思い出したのが、唐沢俊一の『トンデモ
怪書録』 P.183 にある、『THE BIG BOOK OF WEIRDOS』 (唐沢俊一の訳では「変人・
奇人大全集」) という本からの漫画 (アメコミ) の引用だったりする。

> YOUNG NICOLA SAW A LOT OF TIMES...
> FLASHING LIGHTS...


『トンデモ一行知識の逆襲』執筆時の唐沢俊一は、これを思い出さなかったのかなと思っ
たけど、そのページ (P.183) には、唐沢俊一のセリフとして「電気の天才ニコラ・テスラ
(上)は常に頭に火花を散らしているし
」という書き文字があるし。もしかして、唐沢俊一
にとって漫画に描かれた頭の周囲の火花は、テスラが電気の天才ということを示すもの
でしかなかったのかも……。

あ、それから、テスラが図画の成績が悪かった理由は、唐沢俊一のいうように「あまりに
細部まで描写しようとするので、たいてい、図画の時間中に完成しないまま
」だったから
かどうかは、結局わからなかった。現実の風景と幻覚との区別がつかないため、どちらを
描いてよいかわからなかったから――の方が話としては面白いかなとも思ったのだけど、
本人のしんどさを考えると無責任な面白がり方かも。

関連派生トリビア:
テスラコイルの放電は何か綺麗

その他参考 URL:
- http://photo-collage.jp/gensougarou/mag/past/53.html
- http://lounge.plaza.rakuten.co.jp/CDDVD013/diary/200812240000



   
 
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