2009/1/2 3:45
『とても変なまんが』というより、とても変な早川書房…… その他の雑学本 間違い探し編
『とても変なまんが』 P.169
「泉」というのは、『赤ん坊帝国』などの漫画の作者である泉ゆき雄のこと。
亡くなっていなかったのに、唐沢俊一に死んだことにされてしまった漫画家である。
そして、この本の間違いについては、唐沢俊一の Web 日記に書かれているのだが……。
「裏モノ日記」 2001年 06月 05日(火曜日)
http://www.tobunken.com/diary/diary20010605000000.html
>それから水道橋。著書『とても変なまんが』で泉ゆき雄の『赤ん坊帝国』に触れ、泉氏
>が亡くなった、と書いたのだが、実はまだ館林にご健在であることがわかり、お詫びに
>早川書房のAさんとお宅までうかがうことにした。そうしたら泉氏の方から出向いてきて
>くれるとのことで(大恐縮である)、3時半に水道橋の駅でA氏と待ち合わせて、指定さ
>れた喫茶店に行く。
> 実はこの待ち合わせでポカをやり、飯田橋で降りてしまった。あわてて早川書房に
>電話して、なんとかコトナキを得て、時間ギリギリに水道橋の喫茶店『ライン』へ。泉
>先生の他に、当時の少年画報の担当者であったお二人の方も同席。丁重にお詫びを
>申し上げて、いろいろとお話をうかがう。泉先生の顔を見たとたん、失礼ながら、「あ、
>『赤ん坊帝国』のイボイボ博士というのは作者自身がモデルなのだな」 と思った。間
>違いにしろ殺されたことになり、泉先生にはさぞご不快のこととは思うが、“いや、唐沢
>さんの誠意はわかりましたよ”と言ってくれたのでホッとする。
http://s04.megalodon.jp/2009-0102-0239-42/www.tobunken.com/diary/diary20010605000000.html
……最初に、上に引用した唐沢俊一の日記を偶然に目にしていて、生きている人を
死んだことにして本に書いてしまった割には、やれ電車に乗り違えただの、「イボイボ
博士というのは作者自身がモデル」だの、緊張感に欠けているなあ、本当にすまないと
思っているのだろうかと、少し疑問に思った。
その後で、最初に引用した、『とても変なまんが』に収録の文章を読んで、「うわあ」と
思った。亡くなったことにしただけでも失礼なのに、「もう少し寿命を与えていれば、さらに
ユニークな作品を生み出した人だったろう」とも書いてしまっている。泉ゆき雄の心中は
どのようなものだったろうかと、こちらの方が心配になる。
そして、唐沢俊一は日記で、この件について何度か言及を重ねる。
「裏モノ日記」 2001年 06月 07日(木曜日)
http://www.tobunken.com/diary/diary20010607000000.html
> 先日の泉ゆき雄先生がらみのことで、K企画なるところから電話。まことにこちらに
>好意的な態度をとってくれて、正直なところ、ちょっと拍子抜けがするくらい。いくらなん
>でも、少しはお詫びを形にしようと思っていたのだが、丁重に辞退される。SFマガジン
>に訂正の文章を記載することのみ、打ち合わせる。早川書房のA氏に電話して成りゆ
>きを報告するが、むこうも“あらあら”とかえってとまどっていた程。
http://s02.megalodon.jp/2009-0102-0251-10/www.tobunken.com/diary/diary20010607000000.html
「裏モノ日記」 2001年 07月 10日(火曜日)
http://www.tobunken.com/diary/diary20010710000000.html
>泉ゆき雄先生の件については、あちらの元・担当さんから、“ご迷惑をおかけしまし
>て”と、かえって謝られて恐縮したとのこと。
http://s01.megalodon.jp/2009-0102-0255-56/www.tobunken.com/diary/diary20010710000000.html
何だか泉ゆき雄サイドの寛大さに甘え過ぎではないかという感じがするし、相手に詫びる
気持ちよりも、相手に何を要求されるか戦々恐々としている気持ちだけが伝わってくる文章
だが、上に引用した 2 つは、まだよい。結構酷いのが、次に引用する分。
「裏モノ日記」 2001年 08月 11日(木曜日)
http://www.tobunken.com/diary/diary20010811000000.html
> 車中で『噂の真相』をパラパラ読む。ここも最近、誤爆専門誌の感。泉ゆき雄先生の
>ことがらみで、“唐沢俊一の『へんなまんが』回収の噂”などとあるが、回収などしては
>いないし、泉先生との一件はこの日記にも、元連載をしていたSFマガジン誌上にも
>ちゃんと訂正とお詫びを明記して掲載している。ちょっとしらべれば、噂でなくきちんとし
>た情報を簡単に手に入れられるはずなのに。第一、『へんなまんが』ではなく『とても
>変なまんが』である。
http://s04.megalodon.jp/2009-0102-0304-34/www.tobunken.com/diary/diary20010811000000.html
確かに、確認も入れないで記事にする『噂の眞相』もどうかと思うが、「この日記にも、
元連載をしていたSFマガジン誌上にもちゃんと訂正とお詫びを明記して掲載」しただけ
で事足れりといわんばかりに逆ギレする唐沢俊一には、ちょっと呆然とした。唐沢俊一
のいう「この日記」を読んでいれば、回収を噂したくもなるのが、むしろ普通の感覚では
ないかと思うのは、素人考えでしかないんだろうか。
次の版で改訂するにも次の版が出るほど売れていないから、回収するには経済的事情
がなかなか許さないから――など、いろいろ理由はあるのかもしれない。しかし、事情が
許しさえするなら、唐沢俊一の Web 日記や SF マガジンでの告知だけではなく、単行本
だって直せるなら直したいものだとは思わないのだろうか。読者への浸透ひとつを考えて
も、日記と雑誌だけの対応で、「ちゃんと訂正とお詫びを明記」などと胸をはっている場合
ではないだろうと思う。
……「手塚『ブッダ』のマーラはまろやかな曲線で構成され……」の件や、文庫版『星を
喰った男』で著作権者から潮健児の名前をけずった件などもそうなのだが、本当は「人と
して間違っている編」のコーナーでも新設して、そこに収録した方がよい話のような気も
している。
そのユニークかつ多彩な作風で売れっ子だった泉は、当時の人気月刊誌
『少年画報』『少年』に並行して作品を発表していたが、過労が身体をむしば
んだか、『カッパの千坊』連載中に病に倒れ、帰らぬ人となった。もう少し寿命
を与えていれば、さらにユニークな作品を生み出した人だったろう。惜しんでも
あまりある。
「泉」というのは、『赤ん坊帝国』などの漫画の作者である泉ゆき雄のこと。
亡くなっていなかったのに、唐沢俊一に死んだことにされてしまった漫画家である。
そして、この本の間違いについては、唐沢俊一の Web 日記に書かれているのだが……。
「裏モノ日記」 2001年 06月 05日(火曜日)
http://www.tobunken.com/diary/diary20010605000000.html
>それから水道橋。著書『とても変なまんが』で泉ゆき雄の『赤ん坊帝国』に触れ、泉氏
>が亡くなった、と書いたのだが、実はまだ館林にご健在であることがわかり、お詫びに
>早川書房のAさんとお宅までうかがうことにした。そうしたら泉氏の方から出向いてきて
>くれるとのことで(大恐縮である)、3時半に水道橋の駅でA氏と待ち合わせて、指定さ
>れた喫茶店に行く。
> 実はこの待ち合わせでポカをやり、飯田橋で降りてしまった。あわてて早川書房に
>電話して、なんとかコトナキを得て、時間ギリギリに水道橋の喫茶店『ライン』へ。泉
>先生の他に、当時の少年画報の担当者であったお二人の方も同席。丁重にお詫びを
>申し上げて、いろいろとお話をうかがう。泉先生の顔を見たとたん、失礼ながら、「あ、
>『赤ん坊帝国』のイボイボ博士というのは作者自身がモデルなのだな」 と思った。間
>違いにしろ殺されたことになり、泉先生にはさぞご不快のこととは思うが、“いや、唐沢
>さんの誠意はわかりましたよ”と言ってくれたのでホッとする。
http://s04.megalodon.jp/2009-0102-0239-42/www.tobunken.com/diary/diary20010605000000.html
……最初に、上に引用した唐沢俊一の日記を偶然に目にしていて、生きている人を
死んだことにして本に書いてしまった割には、やれ電車に乗り違えただの、「イボイボ
博士というのは作者自身がモデル」だの、緊張感に欠けているなあ、本当にすまないと
思っているのだろうかと、少し疑問に思った。
その後で、最初に引用した、『とても変なまんが』に収録の文章を読んで、「うわあ」と
思った。亡くなったことにしただけでも失礼なのに、「もう少し寿命を与えていれば、さらに
ユニークな作品を生み出した人だったろう」とも書いてしまっている。泉ゆき雄の心中は
どのようなものだったろうかと、こちらの方が心配になる。
そして、唐沢俊一は日記で、この件について何度か言及を重ねる。
「裏モノ日記」 2001年 06月 07日(木曜日)
http://www.tobunken.com/diary/diary20010607000000.html
> 先日の泉ゆき雄先生がらみのことで、K企画なるところから電話。まことにこちらに
>好意的な態度をとってくれて、正直なところ、ちょっと拍子抜けがするくらい。いくらなん
>でも、少しはお詫びを形にしようと思っていたのだが、丁重に辞退される。SFマガジン
>に訂正の文章を記載することのみ、打ち合わせる。早川書房のA氏に電話して成りゆ
>きを報告するが、むこうも“あらあら”とかえってとまどっていた程。
http://s02.megalodon.jp/2009-0102-0251-10/www.tobunken.com/diary/diary20010607000000.html
「裏モノ日記」 2001年 07月 10日(火曜日)
http://www.tobunken.com/diary/diary20010710000000.html
>泉ゆき雄先生の件については、あちらの元・担当さんから、“ご迷惑をおかけしまし
>て”と、かえって謝られて恐縮したとのこと。
http://s01.megalodon.jp/2009-0102-0255-56/www.tobunken.com/diary/diary20010710000000.html
何だか泉ゆき雄サイドの寛大さに甘え過ぎではないかという感じがするし、相手に詫びる
気持ちよりも、相手に何を要求されるか戦々恐々としている気持ちだけが伝わってくる文章
だが、上に引用した 2 つは、まだよい。結構酷いのが、次に引用する分。
「裏モノ日記」 2001年 08月 11日(木曜日)
http://www.tobunken.com/diary/diary20010811000000.html
> 車中で『噂の真相』をパラパラ読む。ここも最近、誤爆専門誌の感。泉ゆき雄先生の
>ことがらみで、“唐沢俊一の『へんなまんが』回収の噂”などとあるが、回収などしては
>いないし、泉先生との一件はこの日記にも、元連載をしていたSFマガジン誌上にも
>ちゃんと訂正とお詫びを明記して掲載している。ちょっとしらべれば、噂でなくきちんとし
>た情報を簡単に手に入れられるはずなのに。第一、『へんなまんが』ではなく『とても
>変なまんが』である。
http://s04.megalodon.jp/2009-0102-0304-34/www.tobunken.com/diary/diary20010811000000.html
確かに、確認も入れないで記事にする『噂の眞相』もどうかと思うが、「この日記にも、
元連載をしていたSFマガジン誌上にもちゃんと訂正とお詫びを明記して掲載」しただけ
で事足れりといわんばかりに逆ギレする唐沢俊一には、ちょっと呆然とした。唐沢俊一
のいう「この日記」を読んでいれば、回収を噂したくもなるのが、むしろ普通の感覚では
ないかと思うのは、素人考えでしかないんだろうか。
次の版で改訂するにも次の版が出るほど売れていないから、回収するには経済的事情
がなかなか許さないから――など、いろいろ理由はあるのかもしれない。しかし、事情が
許しさえするなら、唐沢俊一の Web 日記や SF マガジンでの告知だけではなく、単行本
だって直せるなら直したいものだとは思わないのだろうか。読者への浸透ひとつを考えて
も、日記と雑誌だけの対応で、「ちゃんと訂正とお詫びを明記」などと胸をはっている場合
ではないだろうと思う。
……「手塚『ブッダ』のマーラはまろやかな曲線で構成され……」の件や、文庫版『星を
喰った男』で著作権者から潮健児の名前をけずった件などもそうなのだが、本当は「人と
して間違っている編」のコーナーでも新設して、そこに収録した方がよい話のような気も
している。