トンデモない一行知識の世界 OLD - 唐沢俊一の「雑学」とは -

一部で有名な唐沢俊一の一行知識に、ツッコミを入れたり派生トリビアを書いたり。
「愚かで分別のない人と思われたいなら、唐沢俊一のトリビアを引用しなさい。」

 
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2008/11/9  15:02

グローブといっても小室とは関係なく  『トンデモ一行知識の逆襲』間違い探し編

『トンデモ一行知識の逆襲』 P.56
 浅草あたりの湯屋では、朝早くやってくる二日酔いの客のために、湯の
中に丁字(グローブ)の実を入れてわかし、丁字の香りで気分をすっきり
させるサービスをしていた。これは、吉原帰りで、体に染み付いた白粉の
匂いを落とそうという客にも好評だったらしい。

「丁字風呂」でググると、京都の地名である丁字風呂町がズラーッと出てくるわけだが、
おいといて。

http://www.getgoal-fukuda.net/leokwiki/index.php?%C3%FA%BB%FA%C9%F7%CF%A4%C4%AE
>丁字風呂町(ちょうじぶろちょう)
>江戸初期、この地に丁字風呂と称する風呂屋があったことによる。


「丁字」や「丁子」と、「風呂」や「湯屋」をいろいろ組み合わせて探したけど、江戸時代の
湯屋で丁字の香りの風呂の説明となると、該当するのはこれくらい↓だった。

http://www.deston.net/rakugo/ensyoukoten/FCCL861.html
>覚え書────三遊亭圓生
〈略〉
> 丁字風呂。淡紅色の花を開く丁字のつぼみを乾燥して薬用香料としたものを沈丁
>(じんちょう)、沈香なぞと称します。これを風呂の中に入れた湯屋が文政期にあった
>そうで、お洒落な者がはいったのでしょう。香水風呂の一種ですね。


上で引用した文章によると、使うのは丁字の花のつぼみで、唐沢俊一のいう「湯の中に
丁字(グローブ)の実を入れてわかし
」とは異なる。他の資料を見ても、香料としての利用
は、丁字のつぼみを原料として使うものと書かれているので、たぶん「実を入れて」は
唐沢俊一の間違い。

http://www.mmjp.or.jp/tajimamori/sub55.htm
>丁子の樹は常緑高木で、花の蕾が紅色になった時摘み取って干したものが丁子香と
>呼ばれ貴族の間で使用されていたのでした。
>正倉院には御物として現物があるそうです。
>丁香は実を粉末にして健胃剤、風邪薬などにも使用されました。


http://www.taiyodo-kanpo.com/kanyaku/yakumi/chouko.htm
>丁香とは  丁子とも言われインド諸島にとれるチョウジの花のつぼみの乾燥したもの
>です。 樹齢六年前後からの開花前のつぼみをとって煙で50℃以下で加熱して乾燥、
>または日に干して乾燥させて使用します。 丁香の名はその形状が釘のようでその形
>の丁の字をとり香りのきついところから香の字を得てなったものです。
>効能  ■男女ともに効く強精剤として用います。■胃の分泌が少なくて消化不良の
>状態の時刺激を用いて胃酸の分泌を盛んにして胃を健やかにします。


http://www21.big.or.jp/%7Epcs/ent/kawokiku/kawokiku.htm
>一人の修行僧が仏前で作法するときに、「香」とどのくらい係わりを持つかは、天台、
>真言の密教においては、浄衣を着る前、丁字香を入れた「丁字風呂」に入り、身を
>清め浄衣をまとい道場にては、口に丁字香を含み、塗香で身体と衣服一切を清めます。


http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ee-kaori/houi/iro4.htm
>古くは実を粉末にして建胃剤、風邪薬などに使用された。
>また丁子の実を絞った丁子油は、麻酔剤、防臭剤にも利用された。


さらに、唐沢俊一の文章でよくわからないのが、「二日酔いの客のために」。つぼみに
しても実にしても、健胃剤として使われていたとのことだから、薬とかお茶とかにして
飲めばよいと思うのだけど。「丁字の香りで気分をすっきり」といわれても、江戸時代の
日本にアロマテラピーの概念のようなものは、あんまりなかったんじゃないかと思うし。

また、「吉原帰りで、体に染み付いた白粉の匂いを落とそう」という客が、近くとはいえ
浅草あたりの湯屋」までいくかどうかも疑問。吉原の中にも湯屋はあったんじゃないか
と思うし、明治 4 年の話だけど『松と藤芸妓の替紋』では、店に丁字風呂があるように
読める。

http://novel.atpedia.jp/page/2579.html
>下女「降って来たって、お負けよ、一朱ぐらいに」
>車夫「ヘエ何うでも宜うございます」
>  とフランケットを身体に巻附け、ずぶ濡になっている車夫が、下女の後からびしょ/
>\附いてまいる所を、藤川庄三郎は丁字風呂(ちょうじぶろ)の蔭に隠れていたは、愚
>痴な女に男の未練で、腹立紛れに美代吉を打(ぶ)ん殴って出たが、まだ腹が癒えず、
>何うも身請をされては男の一|分(ぶん)が立たんと、旧(もと)の士族さんの心が出まし
>たから、小蔭に隠れて様子を立聞くと、奧州屋新助が美土代町へ帰るようだから。


まあ、これで、吉原と丁字風呂というのが、「ざんす」の丁子屋からきた混同だったら、
面白いんだけど。さすがに、ないか。

http://sakuzaemon.blog57.fc2.com/blog-entry-8.html
>ありんす言葉という吉原独特の言葉がありんす~(笑)これは、地方出身者の遊女が
>多いため、お国訛りを誤魔化すために生まれたといわれてやす。吉原の中ではみな
>同じようなありんす言葉を使ってるように思われがちでやすが、実は見世ごとに微妙に
>違っておりやした。
〈略〉
>丁子屋は、「ざんす」。「ようござります」→「ようござんす」



   
 
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