トンデモない一行知識の世界 OLD - 唐沢俊一の「雑学」とは -

一部で有名な唐沢俊一の一行知識に、ツッコミを入れたり派生トリビアを書いたり。
「愚かで分別のない人と思われたいなら、唐沢俊一のトリビアを引用しなさい。」

 
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2008/7/29  1:55

『死刑百科事典』の抜粋と「親切&便利な検索結果付き」との連携  その他の雑学本 パクリ探し編

唐沢俊一「知らなきゃ良かった!」 (MouRa) 第六回「なかなか死ねない話」
http://moura.jp/liter/karasawa/006/index.html#006
 電気椅子による最初の処刑者として有名なのが、ウィリアム・ケムラーと
いう男で、彼は雇い主の女性をオノで叩き殺した罪で、1890年8月6日に、
ニューヨークのオーバーン刑務所で処刑された。ケムラーの身体に電流が
通されたとき、すさまじい音がしたが、彼は死なず、失神して意識不明と
なっただけだった。仕方なく何度も電気を流すと、電極を取り付けた頭の
部分の肉が焼けだし、ケムラーは昏睡状態で口からあわを吹き始めた。
数回の電撃をかけた後、やっとケムラーは死んだ。

そっくりな文章が、明石書店のサイトの中の、『死刑百科事典』からの抜粋に存在する。

http://www.akashi.co.jp/menue/books/1720/electricchair.htm
> この新しい器具で最初に処刑されたのは、雇い主の女性を殺害して絞首刑を宣告
>されたウィリアム・ケムラー(William Kemmler)だった。ケムラーは1890年8月6日に
>ニューヨーク州のオーバーン(Auburn)刑務所で木製の電気椅子に座らされた。だが、
>そこで起こったことは予想外だった。ケムラーの身体を電流がすさまじい音を立てて
>流れたが、死なせるには不十分であり、彼は失神して意識不明となったにすぎなかっ
>たのである。電極と皮膚の間にはさんだぬれた当て物が乾き始めると肉が焼けだし、
>昏睡状態で口からあわを吹き始めた。数回の電撃をかけて、ついには死亡させたが、
>立会人の多くは嫌悪感にとらわれた。


内容はほぼ同一。「雇い主の女性を」「失神して意識不明と」「肉が焼けだし」「昏睡状態
で口からあわを吹き始めた
」「数回の電撃をかけ」の箇所は完全一致である。

唐沢俊一の Web 連載は 2004 年で、明石書店の該当ページは 2006 年の更新と書か
れていた。しかし、『死刑百科事典』の著者は「マーク・グロスマン(Mark Grossman)」 で
翻訳者が「及川裕二(おいかわ ゆうじ)」。
(http://www.akashi.co.jp/menue/books/1720/chosha.htm)

外人がわざわざ唐沢俊一の Web 上の文章をパクって英訳するのもおかしいし……と
思ったら、『死刑百科事典』という本は 2003 年の発行だったので、こちらの方が先。

http://www.amazon.co.jp/dp/4750317209/
>死刑百科事典 (単行本)
>マーク グロスマン (著), Mark Grossman (原著), 及川 裕二 (翻訳)
〈略〉
>単行本: 450ページ
>出版社: 明石書店 (2003/04)


なお、同じウィリアム・ケムラーの処刑の様子を書いたものでも、内容も文章もそうそう
似たものには通常ならないということは、下記の Wikipedia の記述と比較しても明らかだ。

http://ja.wikipedia.org/wiki/ウィリアム・ケムラー
>発電機は1,000ボルト充電されていた。それで速やかな失神と心停止を与えるに十分
>だろうと予想されたのである。その電気椅子は事前にテストを済ませていて、前日には
>馬を感電死させるのに成功していた。
>ケムラーは17秒間、電流を流された。立会人たちによれば、肉の焦げる臭いがし、吐き
>気を催した見物人が数人、部屋から逃げ出したそうである。電流が切られ、ケムラーの
>死が宣言された。
>しかし、立会人はケムラーがまだ呼吸していることに気がついた。主治医のエドワード・
>チャールズ・スピツカ博士(Edward Charles Spitzka)ならびにチャールズ・F・マクドナル
>ド(Charles F. Macdonald)博士はケムラーの生存を確かめるため、前に進み出た。
>ケムラーは生きていた。スピツカ博士はこう叫んだ。「電流を戻して、早く。ぐずぐずしな
>いで」
>再び電流が流され、ケムラーは2,000ボルトの衝撃を受けた。皮膚下の血管が破裂し、
>出血し、ケムラーの体は燃えだした。結局、処刑が完全に終わるまで8分を要した。
>ウェスティングハウスは後にこうコメントした。「彼らは斧を使うべきだった」。立会ってい
>た記者の1人も「恐ろしい光景だ。絞首刑よりはるかに悪い」と言った。


その他参考 URL:
- http://tondemonai2.web.fc2.com/189.html
- http://www5b.biglobe.ne.jp/%7Emadison/murder/text2/kemmler.html

さらに、MouRa の第六回「なかなか死ねない話」と『死刑百科事典』との酷似は、これ
だけではない。ケムラーについてだけではなく、それに続くマーティン・D・ロッピーに
ついての記述も瓜二つなのだ。

唐沢俊一「知らなきゃ良かった!」 (MouRa) 第六回「なかなか死ねない話」
http://moura.jp/liter/karasawa/006/index.html#006
しかし、この悲惨な死に様も、翌年、シンシン刑務所で行われたマーティン・
D・ロッピーという、51歳の妻殺し男よりはマシであった。1891年の12月
7日、椅子に縛り付けられた彼の体に電流が流されると、その体はショック
で椅子から飛び出しそうになり、苦痛で指の爪が手のひらに食い込んだ。
理論上は15秒間、1750ボルトの電流を流すと、どんな人間も死亡する筈
であったが、医師が調べるとロッピーの気管は開いており、口からは泡を
吹いていた。再び電流が流されると、ロッピーはまたもや声を上げてもがき
出し、突然左の眼球が飛び出して、胸のあたりまでブラ下がった。そして、
全身の皮膚が焦げだして、煙が上がり出した。しかも、こんな状態でまだ、
ロッピーは死んでいなかったのだ。3回目の電流が、今度は21.5秒間
流され、やっとこの妻殺し男は神のもとへ旅立てたのである。

これに対応する『死刑百科事典』の記述は、以下の通り。

http://www.akashi.co.jp/menue/books/1720/electricchair.htm
> 次の処刑もまたシンシン刑務所で行われ、妻を殺害したマーティン・D・ロッピー
>(Martin D. Loppy)に対するものであった。1891年12月7日、51歳のロッピーが
>処刑室へと歩いて行くには、刑務官と教戒師の助けが必要だった。〈略〉電流が
>流されると、ロッピーは前方に飛び出そうとして、革帯はぴんと張られ、指の長い爪は
>手のひらに食い込んだ。15秒たつと、1750ボルトの電流は切られた。〈略〉カルロス・
>マクドナルド(Carlos MacDonald)博士は、ロッピーが死亡していないことを即座に
>見て取った。 殺人犯の気管は開いており、口からはあわが吹き出し始めていたのだ。
>再び電流が流されると、ロッピーはまたもやうめき声を上げ、拘束している革帯から
>身体を引きはがすようにもがいたが、これは無意識に行われているものと思われた。
>立会人が観察していると、突然ロッピーの左の眼球が飛び出し、眼球水晶体の水様液
>がこぼれて顔面を流れ出した。次いで、焼けた電極が皮膚を焦がし始め、煙が上がり
>だした。
> マクドナルドは電流を切るよう命じたが、ロッピーは死亡していたわけではなかった。
>3回目の電流が、今度は21.5秒間流された。このときまでにロッピーの息は絶えた。


手のひらに食い込んだ」「気管は開いており、口からは泡」「ロッピーはまたもや」「
の眼球が飛び出し
」「煙が上がり出した」「3回目の電流が、今度は21.5秒間流され
が完全一致。しかし『死刑百科事典』の方は、さすがに唐沢俊一の文章にあるような、
あわ」と「」の表記不統一はない。

ちなみに、MouRa の連載のページには「親切&便利な検索結果付き」と書いてある。
http://moura.jp/liter/karasawa/006/index.html#006 の唐沢俊一の文章中にある、
「マーティン・D・ロッピー」のテキストリンクをクリックすると、別ウィンドウに Google
の検索結果が表示される。その検索結果でトップにくるのが、明石書店のサイト内の
http://www.akashi.co.jp/menue/books/1720/electricchair.htm なのだ。

つまり、まとめると……

- 2003 年に『死刑百科事典』という本が出版
- 2004 年に Web 連載の MouRa のページに、唐沢のパクリ文章がアップ。
 この時点では多分、「マーティン・D・ロッピー」をクリックしても、検索結果に問題は
 なかった。
- 2006 年以降は、本の一部が明石書店のページにアップされたので……バレバレに。



   
 
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